出資を主導したのはかつて「グーグル・チャイナ」の代表だったKai-Fu Lee(李開復)が率いる「Sinovation Ventures」で、「Accel」や「Intel Labs」、ビル・ゲイツらも参加した。Fictivの累計資金調達額は2500万ドルとなり、30アンダー30出身者が運営するスタートアップの中で最も出資を集めた企業の1つとなった。
現在30歳のEvansはスタンフォード大学出身で、フォードのシリコンバレーのラボに勤務した後、2013年に兄のNateと共にFictivを創業した。Nateは同じくスタンフォードで中国語の博士号を取得し、プライベート・エクイティで働いた経歴を持つ。
二人の起業の背景には、Evansがフォード勤務時代にプロダクトの開発サイクルがあまりに長いことに不満を抱いたことがあげられる。EvansはFictivを“製造業のエアビーアンドビー”にすることを目指し、製品のプロトタイプを迅速に作りたい顧客と、活用されていない製造設備をマッチングするサービスを提供する。
サンフランシスコ本拠の同社は、世界中の機械工場や3Dプリンターを所有する施設を管理している。
「フォードで働いていた時はリードタイムが数週間から数か月だったが、それを数時間から数日に減らすことができる」とEvansは言う。3Dプリンターを活用した工程では、発注当日の納品も可能だ。
FictivはEVメーカーや医療用ロボット企業、家電メーカーを顧客としており、フェイスブックの「EdMod Labs」からはVRビューワーの製造を受注した。フォーブスはFictivの売上を1000万ドル以上と試算している。
同社は先日、中国の広州にもオフィスを開設した。Sinovationからの出資を受けられた背景には、Fictivがアジアを有望な市場とみなしていることがあげられる。
SinovationのパートナーのChris Evdemonによると、Fictivの強みの一つは中国の工場をネットワークに取り込んでいることだという。「フル稼働していない中国の工場を使うことで、プロトタイプの迅速な製作が可能になり、価格も抑えられる」とEvdemonは述べた。
今回得た資金でFictivは製造業者のグローバルネットワークを拡大していくという。
「スピードが必要な工程はアメリカで行い、価格を抑えたい工程はアジアで行うことも可能だ。我々のサービスを使えばサプライヤーを変える必要はないし、香港や深センなどに足を運ぶ必要もない」とEvansは話した。