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I cover business and economics.

Aurelien Morissard/by GettyImages

誰かにとっての凶報は、別の誰かにとっての吉報でもある。ドナルド・トランプ米大統領が発表した欧米など6カ国とイランが結んだ核合意からの離脱は、イランにとっては間違いなく、悪い話だ。だが、サウジアラビアにとっては、全く逆の知らせと言えるかもしれない。

トランプは5月8日、イランが核兵器開発を大幅に制限することに同意し、見返りとして各国がイランに国際取引の拡大を認めるとした核合意からの離脱を表明。米国がイランに対し、すぐにも制裁を再発動する構えであることを明らかにした。

イランは今後ほぼ確実に、主要な外貨獲得源である石油を売ることが難しくなるだろう。そして、それは経済状況の悪化につながる。一方、イランに対する経済制裁は、地理的に近いサウジに以下のメリットをもたらすことになると考えられる。

1. サウジの若き指導者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、長く石油に依存してきた自国経済の多角化に向け、粘り強い努力を続けている。なかでも国営石油会社サウジアラムコの新規株式公開(IPO)には、特に力を入れている。同社の上場が実現すれば、その他の改革も順調に進む可能性が高まる。

サウジアラムコの上場を円滑に実現させるために最低でも必要となるのは、石油市場の活況と証券市場の安定だ。これに関してはすでに、朗報が一つある。イランが制裁措置を受ける見通しになったということは、世界市場に出回るイラン産石油が減少するということだ。つまり、石油価格は上昇すると見込まれる。また、世界の証券市場は現在、極めて良好な状況にある。現状が維持される場合、投資家は同社のIPOに前向きに応じると考えられる。

ただし、米国のイラン核合意からの離脱については、問題を引き起こしかねないデメリットがある。英調査会社キャピタル・エコノミクスは先ごろ、「イランはイエメンやシリア、レバノンをはじめとする中東各国の緊張を高める行動に出る可能性がある」との見方を示した。米国の決定を受け、サウジの首都リヤドに向けてミサイルが発射されたことを指摘している。

2. サウジにとってのもう一つのメリットは、同国が長年にわたって石油輸出国機構(OPEC)加盟国の中でも「スイング・プロデューサー(生産量の増減により価格安定を図る調整役)」と呼ばれる立場を維持してきたことにある。

今回の件への対応として、サウジは石油を増産することになるだろう。そのためイランによる供給量の減少は、需要に影響が出るほどの大幅な価格の高騰につながることはないと見られる。価格の上昇局面で増産すれば、サウジは切望する歳入の増加を実現することができる。

繰り返すが、前述のデメリットはサウジが隣国イエメンの内戦により深く関与していくことになるのか、または中東地域の別の場所で新たに発生した紛争に関わることになるのかということだ。大規模な軍事衝突が発生すれば、サウジの石油生産にも混乱が生じる恐れがある。

編集=木内涼子

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