ビジネス

2018.05.15

hotel koe tokyoが作りだす、「リテールアド」という新たな概念

ストライプインターナショナル、石川康晴社長



Photo by Kenta Hasegawa

hotel koe tokyoが挑戦する「リテールアド」

同時に、hotel koe tokyoは「リテールアド」としての役割もあります。

──リテールアドとは何でしょうか?

具体的に言うと、「hotel koe tokyo」という場所に集まる人たちがアドとなって、新たなマネタイズを生むというものです。

たとえばhotel koe tokyoでは、週末にDJの方々をお呼びして定期的にライブを開催しています。そうすると、感度の高いクリエイターがホテルに出入りするようになる。この「感度の高いクリエイターたちが集まる場所」をつくることが大事だと考えました。

つまり僕たちは、渋谷の奥にいる大人のクリエイターが出入りするお店を作れば、そこでPRをしたいと思うクライアントが増えるはずだ、と仮定したんです。リテールに「アド」の概念を入れて運営しようと。

実際に、2月にはイベントでゴディバ(GODIVA)にスペースを貸しました。4月末には、ユニバーサルミュージックジャパンのイベントを実施しましたし、5月も6月も決まっている。実は、イベントの利益の方が、ホテルやアパレルや飲食の利益よりも大きいんですよね。

──それでは、「ファッション」「食」「宿泊」などはあくまでコンテンツであって、そこに集まる人たちをもとにマネタイズポイントを増やしているんですね。

そうです。もちろん「ファッション」「食」「宿泊」でも儲けようと思っていますし、ECでも儲けるんですけど、そこに「アド」という概念を入れた。この構造ってWeb広告会社に近いですよね。Web広告会社がテクノロジーでやっていることを、僕らはリテールでやっているんです。

ニューリテールは、マネタイズポイントを増やせるかどうか

ニューリテールには、「マネタイズポイントを増やすこと」が上位概念にあると思います。そのためには、オムニチャネル(※)を有効活用する必要がある。

多くの人は、「店舗の会員をECに持っていくこと」が大切だと思っているのですが、そうじゃない。ニューリテールにおいては、4方向の努力が必要になってくるんです。

──4方向の努力ですか?

「小売に顧客を連れてくる努力」と「ECに顧客を連れてくる努力」、そして「小売に連れてきた顧客をECに連れていく努力」と「ECに連れてきた顧客を小売に連れていく努力」です。これら4つが、全部ぐるりとうまく回ることがニューリテールなんですよ。

アリババは、ECに顧客を連れてくるためのデジタルマーケティングは素晴らしいと思いますが、小売からECに顧客を連れていくことはまだできていない。ただ、勢いよくスーパーと百貨店を買収しましたし、おそらくここから「小売からECに顧客を連れていく」ということを、必死でやり始めると思いますよ。

──なるほど。hotel koe tokyoでも、その4方向を意識されているのでしょうか?

もちろんそうです。hotel koe tokyoでは、店舗をブランディングするために「ホテル」というブランドを連れてきたんです。ホテルがいろんなメディアに出たことで、ECのUUが上がり、店舗にも顧客がくるようになりました。


(※)オムニチャネル……実店舗やECサイト、PCやモバイルなどのチャネルを問わず、あらゆる場所で顧客が商品を探したり購入したりできる状態のこと
次ページ > 既存のもの同士を組み合わせて「ないもの」を作る

文=明石悠佳 写真=小田駿一 聞き手=最所あさみ

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事