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2018.05.12

米国ESG投資事情 見かけ倒しのファンドにご用心?

Phongphan / Shutterstock.com

「自分たちの投資で地球を救える」と信じたい人たちが増えている。ファンド・マーケッターたちも嬉々としてその要望に応える構えだ。


ESG投資という言葉がある。環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をつなげたもので、それらの観点に着目した投資を意味する。その市場は今、世界で8兆7000億ドル(約900兆円)と、ほんの5年前の2倍にまで成長している。それは地球環境にとって朗報なのだろうか? いやいや、そう決めつけるのは時期尚早だ。ここでいう「成長」は色んな意味を含んでいる。現に、以前にはありふれたバリューファンドや成長ファンドでしかなかったものが、サステナブル投資やESG投資のファンドとして分類し直されることが相次いでいるのだ。

アメリカン・センチュリー社による2億2700万ドルのサステナブル投資ファンドがその好例だ。元々は2004年にファンダメンタル投資ファンドという名称で、大企業への投資を主眼に設立されたものだった。ところが、期待外れな運用成績が度重なったことから、サステナブル投資の需要増加に鑑みて、これが2017年に改名されたのだ。

「地球環境を守りたいと思わない人はいない。善行を積みながら、同時に数字も出したい。そういったニーズに即したものとなっているわけだ」と、ポートフォリオ管理者のジョー・リーランドは語る。

そのようにモンスターめいた変身を遂げるファンドもあるが、それ以上にはびこっているのが、ESGの定義を拡大解釈したものだ。世界最大級の資産運用会社として並び立つブラックロックとヴァンガードはいずれも、社会的責任投資(SRI)の観点からは首を傾げざるを得ないような企業の株式を含めたESGファンドを運用している。たとえばブラックロックのMSCI KLD 400ソーシャルETFにはマクドナルド、ココフィリップス、オクシデンタル・ペトロリウムの株式が含まれている。マクドナルドは、労使紛争の問題を抱え続けていた企業だ。いっぽう、多くのESGファンドが化石燃料関連企業を除外している。なおブラックロック社は、個々の株式についてのコメントを拒否した。

ヴァンガード社のSRI(社会的責任)投資商品であるヨーロピアン・ストック・ファンドに至っては、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社やロイヤル・ダッチ・シェル社の株式が筆頭に並ぶほどで、「まるで茶番のようなひどさだ」と、投資マネージャーのジェーローム・ドッジソンは批判する。彼は49億ドルの資産からなるパルナサス・エンデヴァーというファンドを運用し、10年間の平均年間リターン率12.4%という成績を残しているESG投資の強固な信奉者だ。
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翻訳=待兼音二郎

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