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誰が5Gを制するか。世界各地で始まる競争

──欧米では5Gを日本よりも1年前倒しして、2019年の商用化に向けて動き出していると聞きます。日本では今後どのようなタイムラインで5Gの導入が進んでいくのでしょうか?

中村氏:日本では大手キャリアが2020年の商用化を目標に、実証実験を重ねています。2020年にはオリンピック会場など、産業領域から少しずつ導入が広がっていくでしょう。先ほど挙げたようなソリューションが形になり、わたしたちの生活に浸透するのは、2024年頃ではないかと考えています。

──米国では国を挙げて5Gを推進していると聞きました。こうした国の支援や法整備が今後の5Gの進展を左右していくのでしょうか?

中村氏:医療や自動車など実社会と結びつく領域で変化が起きますから、各国の政府がどのように動くかは重要になると思います。

おっしゃる通り、米国は国を挙げて5Gを支援しています。政府も積極的に周波数を実験用に解放し、アンテナの付設権にまつわる手続きの整備も、着々と進めている。すでに米国は4G時代で勝利を収めたわけですから、国全体で再び勝ちを取りにいくという機運があるんです。


またイタリアのミラノ市では、実際の利用シーンを想定して、市内全域で5Gの実証実験を始めています。例えば、コネクティッドカーの救急車に5Gのネットワークを活用してもらう実験などを行ったと聞きました。

日本もこうした動きを踏まえ、スピード感を持って動いていく必要がある。神奈川県で5Gの実証実験が予定されていますが、今後はより大規模な規制緩和や実証実験も検討すべきだと考えています。

──5Gの到来によって実社会にも大きな影響がありそうだと感じました。「5Gの時代」を一般の人も体感できるようになるのはいつ頃なのでしょうか?

中村氏:『5Gに移行した』と一般の人が強く意識する日は、もしかしたら来ないのかもしれません。というのも通信システムの変化は、その時代の人々のニーズを満たすアプリケーションやデバイスの登場と並行して起きるからです。

2Gから3Gへ移行した際には音楽を1曲丸ごと端末にダウンロードできるサービスが登場しました。そして4Gの到来はスマートフォンの普及時期とも重なっています。パソコンでしかできなかった重い作業を、モバイル端末からも行えるアプリケーションが次々に生まれました。

こうしたアプリケーションを無意識に利用していくうちに、新しい通信規格がスタンダードになり、いずれアップデートが求められる。

この繰り返しによって、モバイル技術は進歩してきました。そして5Gでも同じ流れがみられるのではと期待しています。



数十年後に5Gの普及を振り返るとき、私たちはどのようなアプリケーションを想起するのだろうか。そう最後に尋ねると、中村氏は「VRやAR」を真っ先に挙げてくれた。5Gの到来は、現実と仮想空間の境目が曖昧になり、物理的な制約から解放される時代の始まりなのかもしれない。

文=向晴香 写真=小田駿一

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