ビジネス

2018.05.14

僕が考える、「ニューリテール」戦略の全貌

ストライプインターナショナル、石川康晴社長


── その「サイズを測る場所」が、店舗になると。

はい。適切なサイズを測る方法として、スタートトゥデイが発表した「ZOZOスーツ」は素晴らしいと思いますが、そこまでハイテクなものじゃなくてもいいと思っています。たとえば店舗に3Dプリンターを置いて、そこで測る。いまの3Dプリンターはかなりアップデートされているので、そんなに難しいことではないと思います。

そうすると、店舗の概念が「データを取る場所」になるんです。店舗に来てもらって、適切なサイズを測り、データを溜めていく。そうすると、ECサイトでもCVR(コンバージョンレート)が上がるレコメンドができるようになります。

エンゲージメントを高め、年間購入回数を増やしていく

次に、当たり前のことを言いますが、店舗は「エンターテインメント」でなければいけません。

──エンターテインメント、ですか。

たとえば、アリババが買収したスーパーの中には巨大な生け簀(いけす)があります。しかも、そこで購入した魚介類はその場で調理してくれる。パックに詰められた魚よりも、生け簀で泳いでいる新鮮な魚が売られている方が、「魚を買いたい」と思っている消費者のエンゲージメントはあがりますよね。

同じように、会社の理念やアーカイブ、フィロソフィーを店舗で伝えていくことも、消費者のエンゲージメントをあげるという点において非常に効果があると思います。

僕らが目指しているニューリテールは、店舗に「データ収集」や「エンターテインメント性」「フィロソフィーや理念を伝える」といった視点を入れながら、お客様のエンゲージメントを上げて熱狂的なファンになってもらい、年間購入数を増やしていくこと。

いままで年間4回しか購入しなかったライトユーザーに、どうやったら年間10回購入してもらえるようになるかを考えることが重要です。

年間10回購入する場所は、店舗でもECでもどっちでもいいんですよ。こだわりがないから、「EC会員」「店舗会員」という言葉を使う必要がない。まとめると、ニューリテールでは「店舗の役割」と「年間購入数」をどう増やしていくかが重要、ということですね。

AIが浸透したあとに必要になるのは「想像力」

これからの5年間は、AIに徹底的に投資した会社と、ITリテラシーがなくて投資できなかった会社の差が出てくると思います。使えない会社は淘汰されていく。

──淘汰されたあとは、どうなっていくのでしょうか。

そのあとは、おそらくコモディティ化に向かっていきますよね。全アパレルがAIを使いだすと、全員が同じものを作り出すようになってしまいます。

たとえば、「ワイドパンツを買ったあとは、スキニーパンツを買う人が多い」というデータが出たとしましょう。すると、スキニーパンツを生産する会社が必然的に多くなります。でもそうなると、ユーザーは違う方向に行き出して、過去データが通用しなくなってしまうことも考えられるんですよ。

一度は「AIが判断したことを作る」という点で、AIを持っている会社と持っていない会社の差別化が出てくると思います。ですが、AIが浸透したあとは、「想像力」がマネジメントに必要になる。人間がユーザーの好みを想像力を持ってどうやってカスタマイズし、導くのか──それが次のステップの課題になってくると思いますね。

文=明石悠佳 写真=小田駿一 聞き手=最所あさみ

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