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2018.05.08

日本国際賞に輝く科学者から学ぶ「真の革新者」になるための教訓

マックス・クーパー教授(The Japan Prize Foundation)

アイスクリームの新しいトッピングを考えるのも、イノベーションだ。一方、ある分野の全体、そして世界をより良い方向へと大幅に変化させることを促す大規模なイノベーションもある。先ごろ発表された今年の日本国際賞の受賞者3人は、間違いなく後者に当たる「革新者」だ。

米エモリー大学医学部のマックス・クーパー教授、豪ウォルター・アンド・イライザ・ホール医学研究所のジャック・ミラー名誉教授は、Bリンパ球・Tリンパ球系列を発見、疾患の病態解明と治療法の開発に貢献した。

また、名城大学大学院の理工学研究科の教授であり、旭化成の名誉フェローでもある吉野彰博士が開発したリチウムイオン電池は、医療機器をはじめさまざまな機器に使用することが可能になっている。

以下、授賞式が行われた会場で3人の博士と話す機会を得た筆者が得た「イノベーションに関する10の教訓」を紹介する。

1. 忍耐力と根気強さを持つ─真の革新には時間がかかる

国際科学技術財団コミュニケーショングループの中原利彦はブログサイトのMediumに、真の科学には時間がかかるものだと題した文章を投稿している。今回受賞した3人の博士たちも、それぞれの研究に数日ではなく数十年という期間を費やしている。

2. 好奇心を持つ

博士らはいずれも、自身の研究を推し進めてきた最大の要因の一つは好奇心だと述べている。イノベーションには時間と忍耐が欠かせない。そのため、必要なのは常にモチベーションを持ち続けることだ。そして、日々のモチベーションとなるのが好奇心だ。新たなアイデアに対して心を開くきっかけを作るものでもある。

3. 挑戦と困難な時期が創造力を育てる

博士らによると、“摩擦”は創造性につながるものだ。3人の人生にも、若いうちにきょうだいを失ったり、患者たちの苦しみを目の当たりにしたりするなどのつらい経験があった。そして、画期的な成果を生んだ彼らのやる気につながったのは、そうした経験だ。困難な時期を恐れず、そこから何を学べるのかを理解しようとする必要がある。

4. 物事は複雑であることを忘れない

真の問題もその解決策も単純なものだと言う人は、あまりにも愚かだ。ミラー博士によれば、「自然界はあまりに複雑だ。長期的に見ても、物事は予測不可能だ。だからこそ関連するシステムに対応するための方法を探し続ける必要がある」。

5. ただ探求する時間を持つ

イノベーションは明確な初期目標と道筋、計画があれば必然的に実現するものであり、計画の実行に集中すべきだと誤解している人たちがいる。クーパー博士は、「科学における最大の飛躍的進歩は、好奇心に駆り立てられた研究によって成し遂げられたものだ。最近ではインフルエンザの万能ワクチンやHIV(ヒト免疫不全ウイルス)ワクチンの開発など、明確な問題(の解決)に対して資金を投じるべきとの強い圧力がある・・・ただ探求するための機会が与えられるべきだ」と述べている。
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編集=木内涼子

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