ブロックチェーンにおける海外と日本との差
安氏は海外を訪れるたびに、「仮想通貨やブロックチェーンに携わるプレイヤーや投資家の量」と「法が先かケースを作るが先か」という点に違和感を感じるという。
「日本は日本という分類にとどまっているので、知識やリテラシーも海外とは比べものになりません。政府勧告のもと法規制をしっかりと用意しているため、気軽にプロジェクトを推し進めにくい状況ですが、海外はまず先にケースを作り、そのうえで法も整備していこうという印象を受けます」
海外のミートアップに行くと投機的なフェーズは終わっているが、日本では儲かったという話が8〜9割占めているのも事実。仮想通貨やブロックチェーンの適切な利用方法やECR-20のトランザクションの問題を待っているという話だけでなく、ICOを行う目的は「資金調達」ではなく「コミュニティを作るため」というのも、海外では当たり前の共通認識になっているという。
オランダでのミートアップ時の写真(ALIS提供)
「正直、ブロックチェーンのような新しい技術は使ってみないと分かりません。車ができるなんて誰も想像しなかったように、『馬より速い乗り物で何が欲しいか』聞かれても、『さらに速く走る馬』としか答えられません。トライしてみて初めてこんなことができるんだと気づきますが、それも出ていないのが日本の状況です。いいか悪いかは別として、法規制がロジックだけで語られているのは残念です」
チャンスが生まれる格差なき世界を目指して
現在、ALISはクローズドβ版を公開中だ。記事のジャンルも仮想通貨やブロックチェーンに絞っているが、口コミとの相性が期待できるため、10月オープン化のタイミングでは、別のメディアを立ち上げ、食や旅行を検討しているという。海外展開も視野に入れている。
2人に展望を聞いた。
「信頼できる人達とさらに色々な気づきを経て、最終的に地方格差の解消を目指したいです。もうひとつは次なる経営手法を作っていくことです」と安氏。同時に、ブロックチェーンによる事業の可能性を沢山の人に伝えるという使命も持ち合わせているという。
CMO、水澤氏(ALIS提供)
「数年後、ALISとは何だったのか振り返った時、学歴やテキスト情報以外のネットワークの形や、つながりの情報等の関係資本が可視化できるようになっていたいです。加えて、マーケティングの遅れもなんとかしたいです。米国企業のCMO設置率40〜50%に対し、日本は4%以下です。新しいことをしようにも、これでは事業はグロースしません」(水澤氏)
ブロックチェーンの技術をファーストペンギン的に使っている今、非中央集権という特徴を生かしたゲームチェンジを起こしたい。そのためにALISはやり遂げたと言われたい──。
安氏が感銘を受けたという、ロンドン・ビジネススクール客員教授、ゲイリー・ハメル著「経営の未来」にはこう書かれている。
“21世紀の企業にとって最も重要な問いは、「我々は周囲の世界に負けない速さで変化しているか」”
“真のイノベーターは現状には縛られないものだ。現状を超えて、これから先実現する可能性のあることを夢見るのである”
新規事業やイノベーション関係者にとって自明の理とも言える至言は、インタビューを通して2人に感じたことと一致した。
連載 : 世界を目指す「社内発イノベーション」事例
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