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世界を目指す「社内発イノベーション」事例


徹底した透明化がもたらす効能

ここで彼らが掲げたのは、徹底した「情報の透明化」だ。ALISは複数のツールを使い、日々の社内のコミュニケーションや3カ月後のタスク、開発コード、ユーザーからの質疑応答等、ありとあらゆる情報を開示している。


ALISのTrello。情報をオープンにすることは、企業の運営方針にも記載されている。

ここまでオープンにしているのは、ICOやブロックチェーンを選択していることとも関係している。誰もが投資できる機会を得られる分、自身の目でサービスを確かめて欲しいという決意表明であり、新しいものを受け入れるまで時間がかかることを助長するかのような、リスク強調の報道への警告でもある。

「ベンチャーだからできることかもしれませんが、オープンソース文化を踏襲し、企業経営も含めて全部やってみようという思想なので、違和感はありません」(安氏)

ブロックチェーン同様に、オープンソースも提唱された20年前から非中央集権の思想に則っている。ソースコードを無償で提供することで誰もがアクセス・改修できる。開発コミュニティの質もアップし、協力した人達は心理的な満足度を得られるというわけだ。

「社員間で『ツイッターで〇〇さんがこう言っていた』とバイネームで語る会話が日常的に行われています。マーケターだけでなく、エンジニアも含めてターゲット目線で物事を見ることは、サービス拡充のうえでとても大きいです」(水澤氏)

情報の透明化によるメリットは巨大なコミュニティ形成にも大いに役立っている。海外のアンバサダーからも「ヤス、30名集めたからALISの紹介をしに来てよ」のように招待を受けることが続いているという。


取材当日も急遽海外出張が決まったとのことで、空港からインタビューに応じてくれた安氏(ALIS提供)。

ICO参加が約100カ国4375人ということからも、世界をまたにかけたコミュニティが形成されていることがうかがえる。「こうして情報をシェアしていることで共通の理解のもとコミュニティ内で議論の質も高まり、思いもよらない発想が出てきます」と安氏。

「既存の経営手法はトップダウンで情報をクローズドにしていることが多いと思いますが、不確実性が高く、カスタマーを対象にしたものに対して経営陣がコントロールするのは難しいです。正解、不正解で決めるのではなく、皆と共創し『自分達がいいと思うことってこれだよね』というものを目指しています」

僕らの試されるところ、と前置きしたうえで、水澤氏は「オープン化することで『大資本にコピーされたら終わり』とよく言われますが問題ありません。情報はコピーされた時点で過去のものとなりますが、人が議論していくものは昇華します。コミュニティが作り上げるプロセスそのものが価値を持つと思っています」と語る。

とはいえ、ずっと単独でやり続けることを決めているわけではない。事業を加速させるためには大手企業との連携も必要と捉えており、実は「将来何かあったらいつでも助ける」という声も多数あるという。

文=木村忠昭

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