ザッカーバーグ、ジョブズを描いた脚本家が次に選んだ題材は?

主演のジェシカ・チャステイン(Photo by Jim Spellman/WireImage)


高額の賭け金が舞うセレブなポーカールームを舞台にした作品だけに、もちろん、そこで繰り広げられるゲームのシーンもこの作品の見どころのひとつかもしれない。とくにNYの「モリーズ・ルーム」では、プラザホテルの部屋に設置されたというポーカーテーブルを取り囲み、ゴージャスなインテリア、華麗なファッション、スリリングなゲームと映像的にもかなり楽しめる趣向だ。

さて、フリースタイルスキーの選手として挫折した主人公は、またもポーカールームでFBIの捜査を受け、地に堕ちることになるのだが、その間、彼女が頑なに守るのが参加者たちの秘密だ。法廷でのやり取りの場面でも、それさえ明かせば彼女の財産は没収から逃れることができるのに、強い意志力で撥ね退ける。

「真実を語りさえすれば、金持ちの有名人になれたはずなのに、彼女はそんなことをする気はなかった。私はその点にとても感心しているし、映画でもそこを賞賛している」と語るように、この主人公の強い意志力と固い信念が、マーク・ザッカーバーグやスティーブ・ジョブズと並んで、監督&脚本のアーロン・ソーキンが鮮明に表現したかったことかもしれない。

同じく、最近日本でも公開されたばかりの、女性アスリートの挫折を描いた「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」(クレイグ・ギレスピー監督、マーゴット・ロビー主演)も、強烈な自我を持つ女性が主人公だったが、こちらも見ごたえのある秀作だった。

たとえ、一敗地にまみれても自分を失うことのない女性。どちらの作品にも、「負の力」さえエネルギーとしてしまう鮮烈な人物像が映し出されている。そして、両者に共通するアスリートとしてのキャリア。強靭な意志力は自らの肉体を鍛錬していくスポーツのなかで宿るのか。

「モリーズ・ゲーム」、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」に、ジェシカ・チャステインが主演した「女神の見えざる手」も加え、強く魅力的な女性を描いた作品として、直近の記憶に印象深く残っている。

連載:シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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