いまやハリウッドでその実力を最も評価されている脚本家のひとりであるアーロンが、次の作品に選んだのが「モリーズ・ゲーム」。このところ旬の企業家たちばかりを描いてきた彼が、今回、題材として取り上げたのは、20代にしてLAと NYで伝説のセレブなポーカールームを開いていた元アスリートの女性なのだ。しかもこの作品で、アーロンは脚本だけでは飽き足らず、初めての監督にも挑戦している。
映画「モリーズ・ゲーム」の主役、モリー・ブルームの経歴は次のようなものだ。1978年、コロラド州ラブランド生まれ。臨床心理士である厳格な父親のもとでスキーを始め、1999年の北米選手権ではモーグルで第3位に入る。その後、12歳のときに受けた脊柱側湾症手術の後遺症で競技を引退、LAでポーカールームの運営を手伝う。
2007年、LAで自らポーカールームを立ち上げるが、違法である手数料は取らず、法律の範囲内で運営していた。2009年、新たにNYでポーカールームを開き、手数料を取り始めるが、FBIの捜査が入り、全財産を没収される。2013年、LAに戻っていた彼女は突然逮捕され、翌年、執行猶予1年、罰金1000ドルの判決が出る。2014年、回想録である「モリーズ・ゲーム」を出版する。
もちろん、アーロン・ソーキンの脚本は、このモリー・ブルームの回想録が基となっているが、彼自身は、彼女の堅固な意志力や他人の秘密を絶対に守るという揺るがない信念に強く引かれたという。
モリーへの取材から、さらに父親との確執や彼女が持つユーモアのセンスなどにも心を動かれされたアーロンは、「私が好きなタイプのストーリーに、突拍子もない善悪の観念が加わっている」とし、「とてもユニークな映画のヒロインになる」と自らメガホンを取ることも決意する。
手練の脚本家でもあるアーロンらしく、物語はモリーの過去と現在が交錯するかたちで重層的に進行し、彼女の回想なども交えながら、ひとりの女性の強い意志に貫かれた筋を通す生き方を描いていく。FBIによって連邦犯罪に問われたポーカールームの女王というイメージから、さらに深く掘り下げた彼女の真の姿が浮かび上がってくる。
モリーを演じたジェシカ・チャステインも実にその役柄に嵌っていた。これまで「ゼロ・ダーク・サーティー」(キャスリン・ビグロー監督)などの演技で注目を集めてきた彼女だが、去年公開された「女神の見えざる手」(ジョン・マッデン監督)でも、敏腕の政治ロビイストを見事に演じ切り、強い魅力的な女性をアピールしてきた。
「モリーズ・ゲーム」でも、それらに劣らぬ素晴らしい演技を見せている。ジェシカ・チャステインの出演作にはこのところハズレがない。