オヴァンバは、例えば、紙オムツなどの日用品(FMCG)やタイヤなどの部品を取り扱う中小企業から、担保のような形で在庫を購入することで、企業に半年から1年の一定期間、資金を提供している。一定期間後に、オヴァンバは商品を売り戻すことで、資金を回収する。
初期手数料の1.5〜3%と、リスク特性に応じた1.5〜3.5%の月額手数料をチャージするビジネスモデルだ。手数料は、倉庫や物流、通関手続きなど、顧客によって変わる。取引先がムスリムに限定されるわけではないが、豚肉、アルコール、タバコ、武器などイスラム法で禁止されている商材は取り扱わない。
限定的な業界の中小企業事業者に特化しているのもオヴァンバの特徴だ。ルウェリン氏によると、事業化がしばしば投機を見出す、木材、ガス、石油などの資源分野や、不動産業、建設業などには投資しない。逆に、カカオなどの一次産品や缶詰、オムツなどの日用品に力を入れている。対象は、従業員数が10〜20名、年商は5百万ユーロ(約6.7億円)以下の中小企業だが、中には年商が2千万ユーロ(約26.6億円)ほどの企業も含まれるという。
オヴァンバは独自開発のアプリを中心とした技術開発にも力を入れている。資金提供を希望する事業者が、まず簡単な登録を完了すると、60秒で予備審査が完了する。予備審査通過後は、より詳細な情報を提供する必要があるが、自然言語で対話するチャットボットを通じての情報提供ができる。
こうして収集したデータセットを独自のアルゴリズムにかけて、審査を行う。マニュアル審査も合わせて行われるが、この技術開発によって、本申請後48時間以内の回答からの、迅速な資金提供が可能だ。
「エムペサの成功はケニア独自のもの」
そのビジネス機会が議論されるとき、アフリカ大陸が単一の国のように扱われ、その多様性が過小評価されることが少なくない。また限られた事例が、アフリカ全てを代表するかのように扱われたりもする。
たとえば、アフリカ発のフィンテックの成功事例として頻出するのは、ケニアの携帯電話会社サファリコムに出資したボーダフォンが2007年に開始したモバイル送金サービス、エムペサ(M-Pesa)だ。同社公開のデータによると、サービス開始から10年経った2016年末時点で隣国のタンザニアやモザンビーク、インドやルーマニアなどの10か国で事業を展開しているが、南アフリカなど撤退を決めた市場もある。
「エムペサの成功はケニア独自のもの」と言うルウェリン氏は、ローカルに根付いたソリューションにこだわる。例えば、元仏領が多い西アフリカ諸国では、元英国領が多い東アフリカ諸国に比べて、失敗をあまり歓迎しない文化が根付き、人々のリスク耐性が低く、起業家精神にも影響している、と分析する。
オヴァンバは、多様な言語や教育レベルにも配慮したサービス展開となっている。アフリカはカメルーンだけでも260もの多様な言語があるといわれる。また、識字能力があっても、銀行ローンの申請書のようなフォーム入力といった技能スキルが必要な場合もある。マイクロソフト社との協業で進めている各言語対応の自然言語ボット開発には、今後もさらに注力していくようだ。
ルウェリン氏は、外国人がアフリカビジネスにどう携わることができるか、というイベント参加者からの質問に対して、現地に拠点を持つことの重要性を主張した。オヴァンバは、南アフリカとモーリシャスにバックオフィス、ITに特化したインド事務所に加え、コートジボワール、米国、カメルーンにも拠点を持ち、今後はスーダンとガーナにも事務所を開設する予定だ。
ルウェリン氏自身も、現在は米国とカメルーンをベースに世界を飛び回っている。そのうえで、欧州や中東に拠点を置いて、アフリカビジネスを展開しようとする欧米企業の手法に対しては批判的な見方を示した。