ビジネス

2018.05.15

アフリカの中小ビジネスを加速する新鋭フィンテック企業

(Photo : Slush Tokyo/ Petri Anttila)


来るべき12億人370兆円の経済圏

今年3月下旬、ルワンダのキガリで開催されたアフリカ連合の会議にて、アフリカの44か国が、アフリカ大陸における自由貿易地域「大陸自由貿易圏(Continental Free Trade Area、CFTA)」の設立で合意した。

アフリカ大陸が単一市場になるためには、ナイジェリアや南アフリカを含む、残り10カ国の署名が必要だが、これらもいずれ参加する見込みが高く、アフリカ大陸内のさらなる貿易の活発化に向けての新たなステップであることは間違いない。アフリカ連合の想定によると、人口12億人の単一市場が実現により、人や資金が流動化し、アフリカ内貿易が活発化することで、アフリカ大陸はGDP3.4兆ドル(370兆円)の経済圏となる。


 
ルウェリン氏も「アフリカの鍵を握るのは貿易」だと断言しており、国内外の貿易をいかに活発化できるかが重要だと語る。ブルッキングス研究所によると、2016年時点でのアフリカ内の輸出は、総輸出の18%にとどまっていた。アジア内の59%、欧州内の69%と比較すると、非常に少ない数字になっているが、関税の撤廃により、この比率が上がることが今後は期待される。

2013年にアフリカ連合で合意された「アジェンダ2063」には、アフリカの各国民が大陸内をビザなしで移動できるようにする「アフリカン・パスポート」の発行に対する議案も盛り込まれていた。明記された2018年内の達成に対しては、厳しそうな見通しだが、人の移動に関してもオープンボーダー化が進み始めている。

こうした動きは、経済的意義だけでなく、1884年から85年に開催されたアフリカ分割のベルリン会議を経て、決定付けられた国境からの解放という意味で、脱植民地化の歴史的意義をも持つ。

いまここにあるアフロ・フューチャリズム

冒頭でも述べた「テクノロジーが新しいアフリカの民主主義だ」というルウェリン氏の主張は、ふたつの文脈によって裏付けることができる。ひとつは、電話回線や銀行というインフラがないところでの携帯電話や電子マネー導入など、「リープフロッグ」という現象として語られることが多いアフリカの技術導入のスピードだ。

もうひとつが、アフリカのデータ化による効率化や事業機会の可視化。アフリカに関するあらゆる統計情報は、他の地域のそれに比べると限られている。データ収集のインフラが限られていたり、インフォーマル経済が発展していたりすることは、要因の一部である。加えて、定性的な情報に関しても、メディアからの発信情報は、限られていたり、多様性に欠けていたりする。

筆者は、民主化の先にある、世界におけるアフリカのプレゼンスの高まりを期待している。オヴァンバのようなテクノロジー企業のサービスによって、より多くのアフリカ企業がグローバル経済に参画し、アフリカがオーナーシップを持って世界経済における優位性を高めていくことは、アフリカのネオ・コロニアリズムからの脱却に繋がっていくはずだ。

植民地化されずに繁栄したアフリカの仮想国ワカンダを舞台にした映画「ブラックパンサー」が、世界中で大ヒットしている。あくまでエンターテインメント世界の文脈としてだが、白人優位のハリウッドにおいて、黒人による黒人の物語が成功を収めた例として、作品は高く評価されるべきだろう。

しかし、アフリカの視点と成功は、未だ「SFの世界」に止まるものなのだろうか。もはや「アフロ・フューチャリズム」は、いま、われわれがいる場所にあるはずだ。少なくとも、ルウェリン氏と彼らの投資家たちはそうした確信を持っている。

連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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文=MAKI NAKATA

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