冷蔵庫もお風呂も持たない、ぼくたちのアウトソーシングライフ

沖縄では、那覇、中城、首里、南城市の4箇所に滞在した



本島からフェリーで2時間ほどのところにある離島・阿嘉島

ホテルは分散化され、街が一つに溶けていく

このアウトソーシング的な考え方は、なにも暮らしだけではないと思う。根本にあるのはシェアするという感覚であり、今では多くの人に受け入れやすくなったように思う。

沖縄の本島から2時間ほどフェリーで行ったところに、阿嘉島(あかしま)という離島がある。人もほとんど住んでおらず、満足できる宿泊施設も少ない。そんなわけで観光客も少ない。そのせい(お陰で)か、中心地に地元の人が運営するコンビニのようなものが2件ほどあるだけで、食事ができる場所も数件。

ぼくが宿泊したのは村の中心地なのだが、ここには露天風呂とシャワー、ベッドがあるだけで食事はできないし飲みものもない。だから夜になると、近くのレストランに食事をしに行き、その後に村の反対側にあるバー(歩いて10分ほどだが)に飲みにいき旅館に戻る。プールはないが、ビーチが至るところにある。

まるで村全体がホテルのようで、夜風に当たりながら石垣に囲まれた道を歩くのがなんとも気持ちいい。島に滞在している感じがもろにくるのだ。このように街や島全体をホテルと見立てるところは他にもある。

東京・谷根千にあるHanareというホテル。宿泊施設にレセプションはなく、少し離れたカフェの二階にある。お風呂は近くの銭湯の大浴場で、食事も街にあるオススメの夜食スポットの地図を渡され、それを片手に街を歩き自分の好きなところに入る。

まるで大型ホテルの中に中華や和食、イタリアンやバーなどいくつものレストランがあるように谷根千の街全体にいろいろなお店がある。ホテルの機能が街に分散しているのだ。
 
一つの建物にすべてがあるのはそれはそれで便利だが、一方でもちは餅屋、それぞれの場所はそれぞれがアウトソーシングするという考え方もあっていいのだと思う。そうすることで地域が一体となり、多くの人が当事者意識を持つことで観光に対する地元の人たちの考え方も変わるはずだ。

暮らしはモバイルでコンパクト化していく



バンでの暮らしはまるで動くHanareのようなものかもしれない。お気に入りのお風呂屋にコインランドリー、朝食の場所にトイレまで、街全体が住まいとなる。

僕たちの暮らしは、もっとコンパクトでモバイル化していくと思う。いままでネットで外部のアウトストレージを使っていたように、リアルなものもどんどんアウトストレージに置くようになるし、家庭内の体験もさらに外部化されていく。大切なのは、何を自分の内へと入れるかということであり、どこにアウトソースするかということ。

ともあれ、日本各地にお気に入りのアウトソーシング先がたくさんできてきた。いつか各地域ごとのリストをまとめたいとも思う。

連載:あらゆる旅先を博物館化する
過去記事はこちら>>

文=成瀬勇輝

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事