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医療の分野に目をやると、現在、世界各地で医師不足が問題となっている。イスラエルでもその影響で検査に使われるエックス線写真などの4割はきちんと読まれない現実があり、病変の見逃しが起きている。

スタートアップ「Zebra Medical Vision」のテクノロジーが導入された近未来の病院では、AIが病変の見逃しを防いでくれる。「Zebra」は過去のエックス線やMRIなどの莫大なイメージを蓄積してディープ・ラーニングし、見逃しを大幅に減少させる。現時点では50の疾患をカバーしており、各分野で「Zebra」が経験豊富なベテラン医師のような力を発揮する。

また健康を維持するには、日々、食事に気をつける必要がある。そこに登場するのが、「SuperMeat」だ。私たちが普段食べている重要な蛋白源である鶏肉を培養し、ラボの中で人工的に作り出す。そうすることで、鶏を飼育するのに必要な土地や発生する二酸化炭素、水の使用を90%以上減らし、感染や病気などのリスクもほぼなくなる蛋白源を生み出す。味と成分は普通の鶏肉と同じだ。

彼氏や彼女をデートに誘うのに最適なスタートアップもある。「bitemojo」のつまみ食いアプリを使えば、街中でオススメの食べ物や飲み物のコースを提案してくれるため、デートで重宝するだろう。近未来には、自分でデートコースを考える必要もなくなるかもしれない。

もう結婚して家庭を持ち、子供を学校に通わせている人たちには、スタートアップの「Keepers」が必要になるかもしれない。「Keepers」はサイバーいじめ対策システムだ。現在、米国では18歳未満の21%がサイバー空間のいじめに遭った経験があるなど、サイバー空間のいじめはすでに世界的に深刻な問題なっている。保護者がSNSやメッセージなどを監視し、いじめの兆候を早い段階で拾い、保護者に知らせることが可能になる。

工事では予算が大幅にオーバーしたり、工期が遅れたりするのは常だ。「SiteAware」は、デジタル技術でそんなコストを45%も削減するドローンを使った2D、3D、4Dのシミュレーションでミスや無駄を見つけ出す。建築物の効率性を高めることにつながるのだ。

趣味の分野でも、近未来にはこんな便利なものが登場する。まず読書は「読む」から「聞く」にシフトするかもしれない。スタートアップの「OrCam」が提供するメガネに装着できる小型デバイスは、本や新聞などに指をかざすだけで文字を読み上げてくれる。また目の不自由な人や、人の顔を覚えられない人のために、目の前に来た人の名前や情報を教えてくれる顔認証もできる。


(Courtesy of OrCam)

またスタートアップ「Lofic」は音楽好きにはたまらないアプリだ。世界中のミュージシャンそれぞれがヴォーカルやギター、ベースなど音を足していくことで新しい楽曲が生まれる仕組みで、それを公開することもできる。

このように、これまでとは違った世界の到来を予感させる数多くのスタートアップが、イスラエルには息づいている。もしかしたら、私たち日本人の生活も、根本的にこれらイスラエル発のスタートアップに囲まれたものになるかもしれない。

イスラエルのスタートアップの開発者や関係者たちの向上心と野心は、圧倒的な勢いがあり、次々に周囲に伝播している。自分もスタートアップを起こせると考えているーイスラエルではそんなことを言う人に何人も出会った。また高校卒業生の75%は、将来、スタートアップに携わりたいと答えているという調査もある。

前述した通り、イスラエルには現在、実に5500社以上のスタートアップ企業が立ち上がっている。なぜこれほどのスタートアップが生まれるのか。背景にあるのは、イスラエル独特の「エコシステム」だ。

文=山田敏弘

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