ビジネス

2018.05.18 18:00

日本流「自分らしさを極める」組織のあり方とは?

オズビジョン、鈴木 良社長



株式会社CRAZY

会社の理念をサービスにする

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新しい働き方を実現するサービスを提供したり、「会社の成長」を通じて「自分らしい働き方」を広める動きもある。急成長を遂げる3社を紹介しよう。「世界の働き方を変える」を会社のビジョンに掲げるチャットワークは、在宅勤務の導入のほか、長期休暇制度や出産立会制度など、社員が発案した数十ものユニークな制度がある。同社のビジネスチャットアプリは米国以外にアジアでも事業展開し、導入企業は16万7000社に上る。

完全オーダーメイドのウエディングなどを手がけるクレイジーは、社員の健康を経営の優先順位の第一に掲げ、子連れ出勤や昼食制度など「生きる」と「働く」を分けない働き方を実践。ウエディング客のヒアリングでは、人生の歩みを深く聞き取り、「人生が変わる結婚式」を目指す。「もっと挑戦したい自分に気づいた」と客から社員になる人(全社員の2割)も多い。「創業10年で売り上げ100億円、社員400名」を掲げる。

HRテックなどを手がけるアトラエ社長の新居佳英は就職活動中に感じた疑問が創業のきっかけだ。「なぜ会社員は楽しそうに働いていないのか」。同社には、肩書きも出世もない。「社員が生き生きと自己実現できる働き方にしたい」と言う新居の理想は、サッカーのように純粋な目的のために一致団結できるチームだ。同社は従業員のエンゲージメントを促進するサービスを開始。今年2月には7期続けての増収増益、過去最大の売上高となった。
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昨年東証マザーズに上場した、ウェブ広告事業を行うフリンジ81も会社の危機をヒントに理想の働き方をサービスを通じて広げている。


Fringe81 田中弦社長

不協和音が聞こえ始めたのは15年ごろ。急成長とともに従業員が100人を超えると、社長の田中弦は「会社のことがわからなくなった」。営業成績が1番の従業員は目立つが、今週最も活躍したエンジニア、会社の行動指針をよく守れた従業員が誰だかわからない。離職者も多かった。

「会社と私は一心同体です」と公言する田中にはショックだった。過激や前衛的などの意味を持つ「fringe」を社名に使い、「一人一人の才能やとんがりを大切にする」という企業文化を大事にしてきた。社内MVP制度やワンフロアにこだわったオフィスで文化を体現し、育ててきたはずだった。

そこで自社用に開発したのがピアボーナスアプリだ。従業員がお互いのいいと思った行動などを見つけ、感謝の言葉を書き込んでポイントを渡す。やり取りはリアルタイムで公開され、共感したら拍手とポイントも送れる。1ポイントは3円で給与に還元(同社の場合)。30ポイント渡しても90円だが、トップが月末に手にするのは1万円分。感謝の言葉だけよりもやり取りが活発化し、社内ネットワークを強化できたという。

「今は人知れずに素晴らしいことをしてくれた社内のアンサングヒーローを把握しています」と田中は話す。アプリは17年に社外サービスとしてローンチし、メルカリなど急成長するIT企業に導入され、主要事業の一つになった。

このアプリには、権限委譲のツールとしての意味合いもある。上司が部下の給与を決めるより、その権限を社内に分散した方が効率的で、会社が強くなるという田中の考え方に基づく。「僕は一番この会社で過激だし、一番この会社っぽい人なんです」

自分らしく考えられる会社

思い切ったマネジメント方法を取り入れる会社は今に始まったわけではない。例えば故山田昭男氏が1965年に創業した岐阜県の未来工業。部下への命令禁止、報奨金付き社内提案制度などユニークなルールがある。根本にあるのは、従業員を管理するのではなく、一人一人が自分らしく、「常に考える」ことを大切にする姿勢だ。山田氏の死後も社会の変化に合わせて、これまでなかった従業員教育に力を入れているという。

創業32年の21(トゥーワン)は広島市を中心に、フランチャイズを含めて110の店舗を持つメガネチェーン店。社長は4年任期制、管理職廃止、従業員の給与を含め意思決定事項は全て社内イントラネットでオープンに決める、フラットな組織を続ける。「従業員の幸せ」「関係者の信頼」「いいものを安く売る」を徹底したところ、上記のような仕組みになったという。従業員は有利な利率の社内預金ができ、ほぼ全員が会社の出資者だ。

同社の創業メンバーで、相談役の平本清は、「よく勘違いされますが、従業員に優しい会社ではありません。実力主義の会社です。私も含めて、自分の幸せのために働いているんです。会社を潰したら出資者の自分が損をしますよね。だから必死に働くし、会社にとって最善を選びます」と言う。この組織で実現できる自分らしい働き方もあるだろう。

大企業でも人事の透明化や自由な働き方を進め、業績を向上させた例はある。カルビーは、ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人社長から09年に転身した会長の松本晃の肝いりで働き方改革を実施。徹底した成果主義と同時に多様で自由な働き方を推進。個人の個性や能力を発揮できる取り組みは新商品の開発や堅調な業績に貢献している。

10社の自分らしい働き方ができる組織を紹介したが、組織の形は様々で、各組織で実現できる「自分らしさ」も様々だ。自分らしく働ける組織を見つけるには、「自分らしさが何か」を知らないといけない。

オズビジョンの鈴木はこう話す。「なぜ自分はティール組織に共感するのか。今の何に不満があって、何を求めているのか。どこに課題意識を持っているのか。改めて仕事の目的や生きる目的を考えるきっかけにすればいいと思います」

文=成相通子 写真=宇佐美雅浩

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