それは障がいか、性格か──私たちは「障がい者」をどう捉えるべきか

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障害特性は連続性である

関連してもうひとつ大切なポイントは、さまざまな障害特性には濃淡があるということ。例えば、先ほど障害特性として挙げた衝動性、興味関心の限定、こだわりなどは、読者も有している特性であろう。

ただ、その特性がもともと濃いと、日常生活を送るうえで困難さが生じる可能性が高い。なぜなら、この世の中は特性の濃い人用にデザインされていないからである。

例えば、感覚過敏という特性のある人がいる。感覚過敏の特性が濃いと、不快に感じる音が多かったりする。読者の中にも黒板に爪を立てる音が苦手な人がいるだろう。聴覚過敏が薄い人や、むしろ聴覚が鈍感な人は苦手な音がそれぐらいかもしれないが、濃い人は黒板に爪を立てる音ぐらい不快な音だらけの世の中だったりするのだ。

このように、自分とは遠い全く別の特性が障害特性、なのではなく、連続性上にある。そして、特性の濃淡と用意されている環境との掛け合わせにより、困難さが増えたり、減ったりする。

世の中は聴覚過敏の人用にデザインされておらず、さまざまな音にあふれているため、当然、生活していく上で困難が生じる。一方で、その人自身が自分の過敏性を理解し、かつ周りの人も理解していたら、イヤーマフをしたり、不快な音を立てないように周りが工夫したりすることもできる。

「性格」なのか「障害」なのか?

ここまでお伝えしたら、上記の答えは明確ではないだろうか。

「性格」か「障害」か。

障害特性は連続性であることから、障害特性があっても環境によって特に困難さを感じなければ、それはおそらく「性格」と呼ばれるであろう。

一方で、本人や周りが困難さを著しく感じており、自身が自分のことをより理解し、周りもその人を理解する必要がある場合は、医師に相談し診断名がおり「障害名」がつくであろう。そのため、困難な状況が起きたときに、原因が「性格」か「障害」で対応を判断するのは不毛であると私は感じる。

性格であろうが障害であろうが、困難な状況は必ずその個人とその個人を取り巻く環境との相互作用の中で起きている。原因は個人の障害特性のみに起因するわけではない。

仮に障害特性があったとしても、その人に合った環境があったら、その人は生きやすくなる。そして、それは、障害のない人にとっても同じである。

「じゃあどう対応したらよいのか?」と思われているであろう。

まずは困難な状況について整理することからおすすめしたい。どんなときにどんな困難な状況が起きるのか。例えば、対応に悩む行動がある場合は、その行動がどんなときにどんな環境や状況で起きるのか、を整理していただくことをおすすめしたい。

それをふまえて、次回はさまざまな特性と接し方や環境の工夫について書きたい。

文=野口晃菜

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