それは障がいか、性格か──私たちは「障がい者」をどう捉えるべきか

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多様な人が共に過ごすインクルーシブな社会を実現するための施策のひとつとして、わたしが重要だと考えているのは、働くことを望む障害のある人が自分らしく働ける文化、土壌や仕組みづくりである。

平成30年4月1日から、障がい者の法定雇用率が引き上げられた。これまでは2%だったが、従業員が45.5人を超える民間企業は、2.2%の雇用率が義務付けられている。今後、平成33年度4月までには、さらに0.1%が引き上げられる予定だ。

雇用率を達成している企業は年々、増加傾向にあるものの、平成29年度の時点ではまだ雇用率達成企業は50%ほどである。

実際に発達障害のある人を採用し、共に働いている方からよく聞かれる質問がある。

「やる気の問題なのか、障害特性なのかがわからない」
「性格なのか、障害なのかがわからない」
「どこまでが配慮なのかわからない」

同様の質問は保護者や園・学校の教員からもよくもらうため、保護者も教員にも参考にしていただきたい。

「障害」の捉え方

まず前提として共通理解を図りたいのが、「障害」という言葉の定義である。

いわゆる「障害のある人」と言われている人たちは、医師により何らかの障害の診断がおりている人のことを指す。身体障害の場合、障害のある、なしのラインは明確であるが、発達障害の場合、障害のある、なしのラインは非常に曖昧である。

というのも、発達障害の場合、過去・現在の生活における行動特性や困りごとのヒアリングや質問紙、心理検査や発達検査の結果などを総合して診断がおりる。

つまり、脳の状態をMRIでとったり、血液検査をしたりして、明確に「ある」「なし」の判断がされるものではない。そのため、特定の障害特性を有していたとしても、日常生活の中で困りごとがなければ、診断を受けていない人も世の中には多く存在するのだ。

例えば、注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性のひとつである、「衝動性」という特性を有している人で、その瞬発力を活かして報道カメラマンやジャーナリストをしている人もいる。もしくは、自閉症スペクトラム(ASD)の特性のひとつである、「興味関心の限定」「こだわり」といった特性のある人が、ひとつのことを極める研究者になったり、ソフトウェアのバグを見つける仕事をしていたりする。

そうした人たちがいる一方で問題なのは、こういった人たちは「たまたま」、自分に合っている職業や環境を見つけて社会に適応しているということ。大半の人は自分に合っている環境や職業に出会えず、相当な生きづらさを抱えている。

そういった方たちがより自分のことを理解し、そして他者がその人を理解し、「たまたま」ではなく、確実に自分らしい人生を歩むことを促進するためにあるのが「障害名」であり、雇用率制度などの仕組みである。
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文=野口晃菜

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