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ロバート・ゴールドスタイン

世界最大の資産運用会社の「秘密兵器」ロバート・ゴールドスタインは、マーケットの実務には全く無縁の45歳だ。全世界の金融資産をモニターするリスク管理システム「Aladdin」を23年にわたり改良を重ねてきた。

現在、アメリカの国家予算をはるかに超える世界の18兆ドル(約2000兆円)に及ぶ金融資産をモニターしているひとつのソフトウェアをご存じだろうか─。

アンディ・ウォーホルのポップなシルクスクリーン(版画)を背景に、大型平面モニターを食い入るように見つめるのはブラックロックのCOO(最高執行責任者)、ロバート・ゴールドスタインだ。その画面に映し出されているのは、世界最大の資産運用会社が有する6兆ドル(約700兆円)の資産の全容だ。世界30カ国、135のチームが運用している。

入社以来23年間、ゴールドスタインが改良に次ぐ改良を重ねてきたこのプログラムは、Asset, Liability, and Debt andDerivative Investment Network(資産、負債、デリバティブ投資ネットワーク)を縮めてAladdin(アラディン)と呼ばれている。

拡大や縮小が自在の、まるでアコーディオンのようなビューが特徴的だ。全社に影響するようなリスクを俯瞰的に見たり、また数秒間で行われる個別の取引を見たりすることが即座にできる。マーケットでのオペレーション実務にはてんで無縁のゴールドスタインが、ブラックロックでここまでの地位に上り詰め、いずれは経営トップにと将来を買われているのも、ひとえにこのソフトウェアのおかげなのだ。

「ブラックロックのような巨大企業の操舵全般をクルマの計器盤なみにシンプルなダッシュボードでやってのける。それは快挙ともいうべきものだ」。ゴールドスタインは自信ありげに語る。「ひとつのシステム、ひとつのデータベース、ひと揃いのモデル。この恩恵に預かれるのは限られた人だけだ」。

ブラックロックCIO(最高投資責任者)のリック・リーダーは運用を任せられた310億ドルのファンドを分析し、さまざまなマーケット環境下でどのようなリスクが生じるか検討するためにAladdinを使っている。

「ユーロ圏崩壊」と名付けられたシナリオでは彼の想定よりも0.79%パフォーマンスが下がることがわかった。次に「中国金融引き締め」のシナリオでは損失は2倍となった。では潜在リスクがもっとも大きいシナリオは何か? それは13年春に米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和縮小を示唆したことで起こった「テーパー・タントラム」と呼ばれる新興国市場の混乱が再び起こることだった。

「ある資産を買い入れることがポートフォリオ全体にどんな影響を及ぼすのかを正確につかめるのが強みだ」とリーダーは語る。17年秋に北朝鮮のミサイルが日本の領土を飛び越えたときには、資産の価格変動リスクが大きすぎないかをAladdinで確かめ、リスク管理のために4億ドルの米国債を買い足した。

文=アントン・ガラ 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=待兼音二郎

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