英国で1330人を対象に実施、先ごろEuropean Journal of Cancerに発表された研究結果によると、調査対象者の3分の1以上が「食品添加物と遺伝子組み換え食品はがんの原因になる」と誤解していた。これらについては過去数十年間の研究で、がんを引き起こすことはないとの結果が示されている。
研究チームは調査対象者らに対し、がんの原因になると見られているものについて「実際に発がん性があると科学的に証明されているのか」どうか質問。また、対象者の生活習慣や健康状態についても尋ねた。
その結果、携帯電話とWi-Fiを含むさまざまな電子機器が発する電磁波の発がん性については、それぞれ35%、23%の人たちが、がんの原因だと認識していた。これらについては現在のところ、発がん性があることを裏付けるだけの十分な科学的証拠は得られていない。
研究を主導した英リーズ大学のサミュエル・スミス博士は、「説得力ある証拠が示されていないものについて、これほど多くの人がリスク要因と認識していることは気掛かりだ」と述べている。
インターネットが影響
過去の研究との比較から、科学的に証明されたわけではないものに関して「がんの原因になる」と誤解する人が増え始めたのは、世紀の変わり目ごろだと見られている。私たちがインターネットやソーシャルメディアを通じて、ニュースや情報にアクセスするようになった結果でもあると指摘される。
がんと診断されるケースの約40%は、生活習慣を変えることによって予防が可能だ。だが、予防できるかどうかは、私たちの認識が正しいかどうかにかかっている。たとえがんのリスクを低減させるために行動を変えたいと思ったとしても、原因を正しく理解していない人、あるいは全く誤った努力をしている人は多いと考えられる。
喫煙・肥満については「正しく理解」
研究チームは、すでにがんの原因になることが科学的に証明されているものについても調査。その結果、恐らく驚くには値しないが、回答者の88%は喫煙ががんの原因となり得ることを正しく理解していた。また、60%以上の人は標準体重を超えていることや日焼けが、がんの原因になる可能性を認識していた。
一方、がん発症の原因となるその他の行動については、あまり正しく理解されていないことが分かった。アルコールと加工肉が原因になり得ると答えた人は、それぞれわずか41%、24%だった。
研究チームはそのほか、がんの原因に関する理解ついて、社会人口統計学的な分析も行った。その結果、教育水準が高い若い世代ほど、発がん性のあるものについて正しく認識していることが分かった。また、がんの原因についての誤解がある人ほど、喫煙の習慣がある人が多いことも確認された。
今回の研究結果は、がん予防活動を行う組織や慈善団体の目を覚まさせるものと言えそうだ。科学的根拠によって発がん性があると証明されたものであるかどうかを周知させるためには、さらなる活動が必要だということを示している。
スミス博士は、「日常の生活における決断について、より多くの人に十分な情報を得た上での決定を促し、同時に不要な心配を取り除くためには、がんの原因について一般に周知させるための活動の強化が不可欠だ」と指摘している。