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2018.05.07 08:30

「紙一枚」で日本にも浸透させた国連「広報戦略」のすべて

波の上あおぞら公園でスタンプラリーをする親子。(写真提供 UNIC)

次の海外ドラマ、映画、TV番組の共通点はわかるだろうか?

「LAW & ORDER:性犯罪特捜班」、「スマーフ スマーフェットと秘密の大冒険」、ベン・アフレックとマット・デイモンが製作総指揮をとった海外ドラマ「インコーポレイテッド」、レオナルド・ディカプリオが製作に加わったドキュメンタリー「地球が壊れる前に」、リアリティ番組「プロジェクト・ランウェイ・オールスターズ」──。
 
ジャンルはバラバラ。犯罪モノからファミリー向け、SF、ファッションバラエティなどなど。

答えは、国連。これらの作品にはすべて国連が関わっている。どの作品も何百万人もの視聴者を得たコンテンツだが、見ているうちに国連が知ってほしいテーマを認知させる役割を果たしている。

国連広報局アウトリーチ部でエンターテインメント業界との連携を担当するジェフリー・ブレズが説明する。

「2009年、国連事務総長は、テレビや映画などのエンターテインメント業界とパートナーシップを組もうと提案し、国連クリエイティブ・コミュニティ・アウトリーチ・イニシアチブ(CCOI)を設立しました。これによって、国連の中でテレビやドキュメンタリーの撮影ができるようになりました。あるいは国連で撮影しなくても、作家や製作者と連携してストーリーに国連に関するテーマをどう絡めていくかを話し合うことができます。

例えば、SFスリラーのドラマ『インコーポレイテッド』(映画『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でアカデミー賞を受賞したマット・デイモンとベン・アフレックのコンビが製作総指揮)は、西暦2074年のアメリカが舞台です。政府の財政破綻や気候変動による飢餓で、貧富の差が広がっていく。そんな世界で人間がどうなっていくかというストーリーです。気候変動、飢餓、格差など、これらのテーマは、2015年に国連総会で採択された『SDGs(Sustainable Development Goals)持続可能な開発のためのグローバル目標』にある17の目標に入っているテーマです」 

遠い世界のことと思われがちな社会的なテーマは、これまでジャーナリストが声をあげて報道という形で広く知らしめようとしてきた。しかし、マジメに取り組めば取り組むほど、まったく関心をもたない層が出てしまう。それは国連も同じだ。

そこで、自分の身近なことだと認知させるために、エンターテインメント業界に対して「オープンになる」という戦略が立てられた。

世界規模の大停電が起きた近未来を描いた海外ドラマ「レボリューション」では、エネルギー問題をテーマとして扱っている。SDGsの17の目標のうち、「エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」は7番目のテーマだ。エネルギーがなくなり、あらゆるテクノロジーが使用できなくなった世界で、荒廃していく社会と人間たちの争いを描いている。

エミー賞にノミネートされた「プロジェクト・ランウェイ・オールスターズ」は、ファッションデザイナーを発掘するリアリティ番組だ。国連とは何の関係もなさそうだが、ファッションショーのランウェイを国連の経済社会理事会の議場で行なった。前出のジェフリー・ブレズが言う。

「この番組は500万人以上が見ています。つまり、500万人を国連に連れてくることを意味するのです」


アメリカの人気リアリティ番組、プロジェクト・ランウェイ・オールスターズ(Photo by Nomi Ellenson / FilmMagic)

視聴者の中には国連の役割どころか、その存在すら知らない人たちがいる。国連が行なっていることを認知してもらい、格差や貧困などのテーマが自分たちに直接関わってくることを認知させる。

ジェフリー・ブレズは、現在、SDGsの広報活動を行なっている。

国連の2015年までの目標とされたMDGs(ミレニアム開発目標)は知らなくても、2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の17の目標を描いたパネル型のアイコンを見たことがある人は多いだろう。

SDGsをどう認知させていったのか。そこには反省があった。
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文=藤吉雅春

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