ビジネス

2018.05.04

はやりの「イノベーションラボ」に潜む落とし穴

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ラボを開設することの影響を、経営陣が事前にしっかりと考えていることは非常にまれだ。この兆候の一つが、明確なイノベーション戦略の欠如だ。多くの企業リーダーは、世界の動向や、それが会社の未来にどのような影響をもたらすのかを十分に考えていない。たとえ考えていたとしても、会社として、イノベーションをどのように活用するかについての明確な視点を作り上げているリーダーは一握りのみだ。

イノベーションラボを開設するリーダーは、ラボが会社を救う「何か」を生み出すことを期待しているだけなのだ。しかし、明確な戦略目標がなければ、会社を救うかもしれない製品が目の前にあっても気づかないことが多い。ラボが作り出した新製品が、会社の主力商品を脅かす場合は特に問題だ。従来の売り上げを守ろうとする本能が働き、それ以外の決断ができなくなってしまう。

リーダーシップチームがラボの設立を熟考していないことを示す2つ目の兆候は、イノベーション管理の明確な枠組みの欠如だ。ほとんどの企業は、イノベーションの成果を追跡・測定する方法を用意していない。さらに、製品をラボから移行する場合の明確な枠組み(元の会社に戻すのか、それとも独立部門として展開するのか)を設けていない。

つまり、ラボの「成功」に対処する準備ができていないのだ。こうしたリーダーにとって、イノベーションの成功は結局のところ、良いことではないのかもしれない。

関係者の管理も必須

本当に賢いイノベーターは、イノベーションを成功させるためには関係者をうまく管理することが必要だと理解している。親会社内でイノベーションプロジェクトに取り組む従業員にとって、関係者をうまく管理する必要があることは非常に明白だ。会社の重要関係者から支持が得られなければ、生み出した製品は成功しないと知っているからだ。

一方、製品がイノベーションラボで開発されている場合、イントラプレナー(社内起業家)たちが関係者管理の重要性を忘れてしまうことがある。しかし、成功を収めるイノベーターは、親会社の関係者とうまく関係を築くことが必要だと理解している。たとえ自分がラボで働いていたとしても、だ。

イノベーションラボの創作物の上にあぐらをかいてはいけない。ラボは安全地帯ではないのだ。親会社は、イノベーションに取り組む従業員のことを、本人が思っているほど気に入ってなどいない。リーダーや重要関係者から賛同を得るには、他にも多くの取り組みが必要なのだ。

編集=遠藤宗生

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