シリコンバレーから学ぶ、ラディカルイノベーションの秘密

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私は、自著『The New Science of Radical Innovation(ラディカルイノベーションの新たな科学)』執筆のための調査として昨年、成功を収めているテック企業の役員たちを取材し、その経営法にある特徴的なパターンを発見した。

私はある役員に対し、囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁」とトップ棋士のイ・セドルの歴史的な対局を観戦したときのことを話した。すると驚いたことに、アルファ碁が用いていた法則は、シリコンバレーのテック系大手の多くがイノベーション促進のために用いていたものと同じように見受けられた。

その法則とは、自己組織化、簡潔な規則、ゼネラリスト型アプローチ、インプットの多様性、執行速度、大量の実験だ。私は、彼の会社でもこうした法則が用いられているのは意図的なものなのか、それとも偶然なのか尋ねた。

ラディカルなイノベーションは偶発的

意図して組み込まれたものではない、というのが彼の答えだった。しかし、彼は次のようにも述べた。「当社では、データに注目するよう従業員に強く求めている、また、社員が意思決定で潜在的な偏見を持たないようにすることにも努めている。できる限り多くのデータを集め、最大限反復することが私たちのやり方だ」

ラディカル(根本的)なイノベーションは、多数の自己組織的な従業員が簡潔な規則を用いて多くの実験をこなし、試行錯誤から学ぶことによって、運良く生じるものなのだ。

ラディカルなイノベーションは偶発的だ。計画はできないが、生まれやすい文化を育てることはできる。従業員には、自己組織化が求められる。つまり、マイクロマネジメント(過干渉)されるのではなく、簡単な規則(Aが起きたら、Bを行うなど)を用いた広範な決定権を与えられるべきだ。

従業員は、こうしたプロセスを通じて試行錯誤から学び、失敗が積み重なって臨界点に達したときにイノベーションが生まれる。

「完璧」は「良い」の敵

また彼は、スピードの重要性も強調した。「当社では、社員同士の交流やスピードの最大化を目指している。膨大なデータセットを持ったアルゴリズムが得意なのがスピード。問題に狭い視野でアプローチするのではなく、多くのデータを見て、多くのインプットを得ることを促している」

彼はまた、次のようにも指摘した。「このプロセスでは、社員が失敗しても安全だと感じ、失敗を恐れないことが必須。AIのアルゴリズムが反復を通して解決策を見つけるプロセスと同じだ」
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編集=遠藤宗生

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