「不幸にも天王星に降り立つ人間がいたとしたら、不快で臭い環境に置かれることになるだろう」と惑星物理学を専門とするオックスフォード大学の教授Patrick Irwinは言う。
「しかし、大気はマイナス200℃でほとんどが水素やヘリウム、メタンでできているため、臭いを感じるまでもなく死んでしまうはずだ」
天王星の大気に硫黄が含まれている可能性は前から科学者の間で議論となっていた。数十年に渡る研究や1980年代の終わりに「ボイジャー2号」が接近したにもかかわらず、判明していなかった。
しかしIrwin教授が率いる研究チームがハワイのマウナケアにあるジェミニ北望遠鏡を使って分光観測を行ったところ、上層大気に硫化水素が確実に存在することが分かった。研究チームはジェミニ北望遠鏡の、近赤外線面分光装置(NIFS)を使って天王星の雲の上の大気から反射した太陽光を分析した。
「観測しようとしていた吸収線は極めて薄かったが、NIFSの感度の良さと天候の良さが幸いしてデータを検出できた」とIrwinは声明の中で述べた。
以前から天王星の大気に有毒ガスの一種が含まれていると考えられていたが、それが硫化水素なのかアンモニアなのかは議論になっていた。今回の発見により、雲がアンモニアの氷で出来ていることが分かった。
「窒素と硫黄(つまりアンモニアと硫化水素)のバランスは、太陽系が形成された過程における惑星の温度と位置で決まった」と研究に参加したレスター大学のLeigh Fletcherは説明する。
太陽系にあるガス巨星は、最初に形成された場所から現在の場所へと移動したと考えられているため、天王星がもともと形成された場所と、その進化の過程を知るにあたり今回の発見は重要な意味を持つ。