米アルツハイマー病協会によれば、同国のアルツハイマー病患者数は現在、推計570万人だ。このうちおよそ550万人が65歳以上、約20万人が65歳未満(若年性アルツハイマー病)となっている。患者数は2050年までに、約1400万人に増えると予想されている。
認知症は米国の医療制度の大きな負担になっている。アルツハイマー病その他の認知症にかかるコストは今年、約2770億ドル(約30兆円)に上る見通し。そのうち1860億ドルが公的医療保険であるメディケア(高齢者向け)とメディケイド(低所得層向け)による支払いとなると見込まれる。
何らかの対策が取られない限り、こうしたコストは2050年までに1兆1000億ドルを超えると見られている。医療保険を通じた公的支出と患者の自己負担はともに、4倍以上に増加する見通しだ。ただ、患者が早期に正確な診断を受けることで、最大で7兆9000億ドルを削減することが可能だと見られている。
米国のアルツハイマー病患者については、以下のような状況となっている。
・ 65歳以上の10人に1人がアルツハイマー型認知症を患っている
・ 病患者の3分の2近くが女性
・ アルツハイマー病その他の認知症を発症する可能性は高齢の白人と比べて、アフリカ系がおよそ2倍、ヒスパニック系がおよそ1.5倍高くなっている
・ 米国の死因の第6位は、アルツハイマー病となっている(65歳以上では第5位)
・ 死亡証明書に記載された死因に占めるアルツハイマー病の割合は2000~2015年までの間に123%増加した(死因第1位の心臓病による死者数は11%減少)
・ 70歳人口のうち、アルツハイマー病患者の61%は80歳になる前に死亡すると見られている。アルツハイマー病にかかっていない70歳の人のうち、80歳まで生きられない人の割合は30%と見られ、およそ2倍の差がある
一方、高齢者の介護については、次のようなことが分かっている。
介護を受けている高齢者の約83%が、家族や友人その他の無償で介護を行う人の世話になっている。介護者の半数近くはアルツハイマー病、またはその他の認知症を患う人の世話をしている。
アルツハイマー病はその他の病気に比べ、介護者の負担が非常に大きい。心身の問題や経済的に負担が大きいことを訴える介護者は、認知症ではない人を世話している介護者の約2倍に上る。また、認知症患者が亡くなるまでにかかる介護費用の70%は、家族が負担している。
・ 介護者の3人に1人(34%)が65歳以上
・ 介護者のおよそ3分の2が女性
・ 認知症の要介護者のうち3分の1以上は、娘が介護者となっている
・ 認知症の要介護者の世話をしている人の4分の1程度が「サンドイッチ世代」。高齢の親の介護と18歳未満の子どもの世話をしている