ビジネス

2018.05.04

3Dプリンターで「結婚指輪」を変えるNYのスタートアップ企業

Stokkete / Shutterstock.com

3Dプリント技術の発達により、プラチナやゴールド、シルバーを使ったオリジナルの結婚指輪を手軽に買える時代になった。

ニューヨークを拠点とするスタートアップ「Holden」が、同社のウェブサイト上でカスタマイズ結婚指輪の販売を開始した。ユーザーは6種類のデザイン、5種類の貴金属、2種類の仕上げ、2種類の幅を自由に組み合わせることが可能で、刻印もできる。一番安いモデルは250ドルだ。

ホールデンは、26歳のアンドリュー・リムと25歳のサイモン・チャンが昨年立ち上げた結婚指輪専門のブランドだ。リムとチャンはダートマス大学時代からの親友で、マーケティング会社のインターンシップを通じて意気投合し、ルームメイトになった。「一緒に料理をしたり、バスケットボールをしたりする中で、互いをよく知るようになった」とリムは言う。

大学卒業後、独学でジュエリーデザインを始めたチャンは趣味でビーズのブレスレットを作るようになり、2015年にリムとともに男女共用のジュエリーブランド「Mujo」を設立。仏教用語の「無常」を名前の由来とする同ブランドは、シンプルで工業的なデザインのファッションリングやブレスレットをオンラインショップやクラフトフェアで販売する。年商は20万ドルとビジネス規模は大きくないものの、二人がHoldenを立ち上げるための基盤としては十分な額だった。

米国では年間200万組以上のカップルが結婚する。リムとチャンが結婚指輪に注目したきっかけは、Mujoの顧客からのリクエストだった。Mujoのデザインを活かした結婚指輪を作ってほしいという依頼に、二人はイエスと答えた。

近年、技術革新によってアパレルやジュエリーの製造・販売のビジネスモデルは大きく変化している。仲介業者を通さずにインターネット上で消費者に直接販売するブランドや企業が増え、消費者は商品をより安く手に入れることができるようになった。

しかし、リムによると、結婚指輪業界だけはあまり変わっていないという。「Noemie」「Vrai & Oro」「Do Amore」などの新興ジュエリーブランドも結婚指輪を扱っているものの、価格は決して安くない。

ジュエリーブランドにとっては、結婚指輪よりもダイヤモンドなどがついた婚約指輪のほうが利益は大きい。しかし、リムとチャンは結婚指輪にチャンスを見出した。その理由について「(流通する結婚指輪は)カスタマイズできる高級ブランドの指輪と大量生産品の二種類しかなかったから」とリムは言う。

さらに同じ頃、リムの兄弟が婚約し、結婚指輪をあちこちの店で探したものの気に入るものが見つからなかったことも起業を後押しした。リムとチャンはリムの兄弟のために結婚指輪を作り、それは後にホールデンの商品のデザインの元となった。現在、リムとチャンはMujoとHoldenの両ブランドを並行して運営している。

ホールデンの低コストな指輪製造を可能にしているのは、3Dプリント技術の進化だ。「つい4年くらい前まで、3Dプリント技術を使ったジュエリー制作はコスト的に難しかった」とチャンは話す。

ホールデンは注文を受けると、3Dプリンターでワックスの型を作り、マンハッタンにあるパートナー会社のもとでキャスティング(鋳造)を行う。指輪は3〜4営業日で完成し、ホールデンは在庫を抱える必要もない。ミレニアル世代を対象とした結婚指輪ブランドとして、「私たちには先発者のアドバンテージがある」とリムは言う。

編集=海田恭子

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