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ごみを捨てたのは誰だ?

こうしたモデルは、スイスのように人々がきちんと決まりを守る社会では機能するかもしれない。しかし、ほかの国が同じことをやるのは難しいだろう。経済的に豊かでない国や、法を守る文化が根付いていない国では、とくに難しいはずだ。

誰かがサプライチェーンにおいて不正をするリスクは常にあるが、ブロックチェーンによって、そうした不正を防ぐことが可能になるかもしれない。たとえばシリアルナンバーの入った緑のごみ袋があれば、スマートフォンのアプリでそれを読み取ることができるだろう。ブロックチェーンシステムを使えば、公認のごみ処理業者が同じ番号の袋が適切に処理されたかどうかを確認することができるのである。

こうなると、説明責任がより重要になるだろう。たとえば、浜辺に捨てられていたプラスチックボトルがどこから来たのかを考えてみよう。

プラスチックボトルがつくられたときに、製造業者にはその情報をブロックチェーン上に保存することが求められる。それぞれのボトルにはQRコードがついており、誰がつくったか、誰が買ったかを特定できるようになる。ブロックチェーンのしくみを使えば、サプライチェーンにかかわるすべての企業と同様、消費者にもよりよい行動が求められるようになる。

浜辺にプラスチックボトルが捨てられていたとき、誰が犯人かを名指しできるようになるわけだ。

ごみを拾って得する仕組み

サプライチェーンの透明性を担保するほか、ブロックチェーンはサステイナビリティを儲かるものにできるだろうか? これは想像するよりも難しいことではない。実際、グローバルなリサイクル企業「Plastic Bank」のような、ブロックチェーンを使ってごみの削減に取り組む多くの企業が生まれている。

Plastic Bankの目的は、途上国におけるごみの削減であり、すでにハイチ、ペルー、コロンビア、フィリピンで活動を始めている。家族を食べさせることに必死な状況であれば、 環境問題まで気がまわらないのは当然だ。そこでPlastic Bankは、プラスチックごみをリサイクルセンターに持ってくることで報酬を与える仕組みをつくった。人々はごみと引き換えにトークンを受け取り、それを使って食料品を買ったり電話代を支払ったりすることができるのだ。

「途上国の多くの人々は銀行口座をもっていません」と、Plastic Bank共同創業者のスーザン・フランクソンは言う。「現金を扱えば、汚職や犯罪に巻き込まれる危険性があります。しかし貧しい地域でさえ、ほとんどの人々はスマートフォンをもっているので、デジタル通貨を使うことができるのです」

集められたプラスチックは業者によって購入され、新しい消費財に生まれ変わる。このシステムはこれらの業者にとっても魅力的だ。ブロックチェーンは透明性を担保するため、彼らにとっても投資がどこに使われたかがわかるからである。

「Plastic Bankの解決策に人々が殺到しています」とフランクソンは言う。「もし昔ながらのやり方でごみ収集所とそれに当たるチームをつくっていたら、大量のプラスチックごみの問題を解決するまでに途方もない時間がかかるでしょう。急激に拡大でき、何十億トンというごみをさまざまな場所で回収できるシステムが求められているのです」

もちろん、こうした大規模なシステムをつくるためには、多くのロジスティクス上の課題もある。だが、世界中の国々でごみが山積みになっているいま、ほかに選ぶべき道があるだろうか?

翻訳・編集=宮本裕人

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