時計の「日付表示」のはじまりは? カレンダー機構の進化

A.ランゲ&ゾーネ / リトル・ランゲ1

腕時計では時間の表し方にさまざまな方法が用いられている。それは、「時、分、秒」だけにとどまらず、もっと長いスパンの「日」、それから「年」の表現方法にまで及んでいる。時間を知ることを第一とした時計にあって、それらは脇役的な存在かもしれない。が、そこにも個性的な表現をするために高度な技術が投入されているのである。

そんななか、多くの人にもっとも馴染みがあるのがカレンダー機構のなかでもデイト(日付)表示だろう。もっともポピュラーなのは、3時位置にデイト表示の小窓があり、そこに数字がデジタルで表示されるタイプである。

そんなダイヤルの小窓にデイトが表示される初の自動巻き腕時計が、1945年に開発されロレックスの「デイトジャスト」である。それは午前零時に瞬時に日付が変わるという機構で、1時間経つごとに、瞬時にジャンプするように時間が切り替わるというもの。ジャンピングアワーの仕組みを応用した画期的なものであった。

それは、腕時計の発展に大きな役割を果たした偉大な開発といえる。また、デイトのみならずデイ(曜日)も同時に表示した“デイデイト”も65年にロレックスが開発したものである。

そして、近代化が進む50年代から70年代にかけて多忙となった現代人の生活に役立つものとして、多くの時計メーカーが着目し、取り入れていったことで、ポピュラーな腕時計のスタイルとして定着していった。ただ、現在使用されているデイト表示は、時刻と連動して午前零時を回るころから、ゆるやかに日付を変更するスムースチェンジと呼ばれるものが主流となっている。

そんなデイト表示も90年代に入ると新たな波が訪れる。A.ランゲ&ゾーネが復活し、94年に発表した「ランゲ1」に搭載されていた“ビッグデイト”である。

デイト表示が2時位置におかれているように、デザイン的にも革新的であるとともに、歯車の数も多く、二枚のディスクをズレることなく動かし、収まるべきところへ収めるように調整するという高度な技術が使われていることもあって、多くのブランドが高級時計のシンボル的に採用し、普及していくことになる。

その証拠に、登場して25年ほどしか経たないものだが、今日では多くのモデルに見られるようになっている。

また、針で日付を表す“ポインターデイト”方式のものも登場するなど、腕時計はデイト表示だけでもさまざまなスタイルをつくり出しているのである。


(左)A.ランゲ&ゾーネ / リトル・ランゲ1
1994年の発表とともに、革新的なデザインと高度な技術で時計界に衝撃を与えたビッグデイトの元祖。今年は2015年に開発された新キャリバーを搭載した、リトル・ランゲ1が登場した。[手巻き、18KWGケース、36.8mm径、369万円、A.ランゲ&ゾーネ 03-4461-8080]

(右)ロレックス / オイスター パーペチュアル デイトジャスト36
堅牢なオイスターケースに、初の360度回転式ローターによる自動巻機構パーペチュアル、そしてデイトジャストを備える。自社製Cal.3235を搭載した36㎜径のモデルだ。[自動巻き、エバーローズロレゾール(SS×18Kエバーローズゴールド)ケース、36mm径、104万円、日本ロレックス 03-3216-5671]

文=福留亮司

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