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2018.05.06

米国クリーン投資事情 化石燃料に頼らないエネルギー投資とは?

fuyu liu / Shutterstock.com


しかし、代替エネルギーがはらむリスクも、ロイヤル・ダッチ・シェル株が座礁資産となりうる可能性に負けず劣らず大きいということも考えられる。そうしたリスクに、ホワイトはどう対処するつもりなのだろうか? まず挙げられるのは、公共政策が変化するリスクだ。

ドイツ人は、再生可能エネルギーに舵を切ったことの代償として、米国の3倍の電気料金を支払うことを強いられている。また、税制改革で風力発電所や電子自動車への補助金が打ち切られることも考えられる。それらについてのホワイトの答えは、風力発電や太陽光発電のコストが下がれば、政治リスクもなくなるというものだ。補助金が必要なくなるまでに再生エネルギーの競争力が高まれば、税制など問題ではなくなるはずだからだ。

だが、脱二酸化炭素への道筋にはまた別の困難もある。常に安定しているわけではないエネルギー源からいかに電力を蓄えるかという問題だ。

リチウム電池がその問題の救世主となる可能性はあるが、ただ問題は高価なことだ。テスラの家庭用蓄電池パワーウォールを多数組み合わせてニューヨーク州の貯水池の代わりにするには480億ドルを要するという見立てもある。ところがホワイトに言わせれば、蓄電のコストは補助金抜きでの再生可能エネルギーのコストに見合う程度には下落するはずだという。それも、1キロワット時あたり5ドルに満たない程度までにだ。

このトレンドがしばらく続けば、政治の働きかけが一切なくても電力供給減はクリーンエネルギーにシフトするに違いない。

だが次なる懸念材料もある。ネットフリックス時代が到来したことでレンタルDVDのBlockbusterが退場に追い込まれたように、太陽光発電や核融合発電で技術革新が起きることで、これまでの投資が無駄に終わってしまう可能性だ。しかしホワイトは、それについてはさほど心配していないという。「私が懸念するリスクは、実現していない成長にお金を投じてしまったり、競合によって利ざやが縮小したりした結果、投資が高い買い物になりはしないかというリスクのことだ」

利ざやの縮小は、太陽光パネル製造業界で実際に起きたことだ。かつてウォールストリートで絶大な人気を集めた産業がいつしかありふれたものになってしまうという事例であり、その結果、10年前には295ドルもしたグッゲンハイム・ソーラーETFの株式が、いまや25ドルにまで下がっているのだ。

この種の金融リスクに備えるためにはふたつの方法がある。ひとつは、簡単には模倣されない製品を作っている会社を探すことだ。

太陽光パネルの組み立てラインを作るのは簡単だが、ヴェスタス・ウィンド・システムズ社が製造するような高さ700フィートの風力タービンをコピー生産するのは困難である。また、ソーラーエッジ・テクノロジーズ社が販売している、コモディティ化されたパネルの働きをよくするための電子回路を模倣することもまた容易ではない。

安心材料を探すために目を向けるべきまた別の箇所は、株式の価格だ。たとえば、GMOのポートフォリオから明らかに除外されているのはテスラ株だ。負債額についてしかるべき考慮がなされることもなく、帳簿価額の10倍で取引されているからだ。対照的に、スペインの電力会社イベルドローラは、宇宙ロケットやハイパーループについての夢のような計画を語ることがない代わりに、コストは帳簿価額の1.1倍で、年間収益率は14倍にもなる。

グリーンエネルギーには「根拠なき熱狂」がつきものであり、それについての注意が必要だ。短期での売りや、レバレッジをきかせたファンドを当てにするのはよそう。前述のモーニングスター社のデータで、10年間の運用成績が最低だったのが、ギネス・アトキンソンの代替エネルギー・ファンドだったことを参考に挙げておこう。

翻訳=待兼音二郎

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