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2018.05.06

米国クリーン投資事情 化石燃料に頼らないエネルギー投資とは?

fuyu liu / Shutterstock.com

太陽光発電関連株の購入を検討中? その理由は儲かりそうだからか、それとも社会的責任を果たそうとして? 米資産運用会社グランサム・マヨ・バン・オッタールー(GMO)でクリーンエネルギー銘柄の運用を手がけるルーカス・ホワイトには、どちらの動機からでも自らのポートフォリオを正当化する用意がある。けれども元をたどれば、エネルギー投資の利益に着目したのがきっかけだった。

ホワイトは6年前に、GMO社の天然資源関連ポートフォリオの運用を委ねられた。エネルギー関連に大規模な投資をすることなしに、そういったポートフォリオを運用する手だてはない。そこでホワイトは策を練るうちに、油田やガス田につきまとう金融上のリスクに思い至った。それを彼は、次のように表現する。

「私が想定する短期から中期までのリスクは、いずれも分散投資で回避しうる。だが、長期的リスクとなるとそうはいかない。『座礁資産』と化す恐れがあるからだ。つまり、CO2排出規制で炭鉱やタールサンド、油田が操業できなくなるかもしれないのだ。また、『破壊的イノベーション』によって、資産が無価値と化す懸念もある」

ならばどうするか? エネルギーに投じる資金の一部を化石燃料以外に回し、太陽光発電や風力発電関連企業株を買うのがよいだろう。

GMOリソーシス・ファンドはロイヤル・ダッチ・シェル、スタトイル、チェサピーク・エナジーというような化石燃料企業株に巧みに分散投資をすることに加えて、太陽光パネルを製造するファースト・ソーラーや、リチウム採掘を業とするソシエダード・キミカ・イ・ミネラ、発電量の3分の1を再生可能資源から得ているスペインの電力会社イベルドローラへの投資も手がけている。

しかし問題は、クリーンエネルギー株を化石燃料株と混ぜ合わせて所有しようと考える投資家がさほど多くはないことだ。そこでGMOは今年、従来のリソーシス・ファンドから派生するかたちでGMO気候変動ファンドを立ち上げた。

クリーンエネルギー専門の投資ファンドだ。代替エネルギー株を取り揃えることで、化石燃料株に手を出すことなく、原油価格の変動を見越した投資のすべてが行えるのだとホワイトは語る。原油価格が上昇すれば、代替エネルギー株も上昇するし、原油が下がればこちらも当然下がるというわけだ。実際、2015年に原油が大暴落した際には、代替エネルギー株にも大損害が生じた。

43歳のルーカス・ホワイトは、ボストンのオフィスまで徒歩と鉄道で通勤している。さらに彼は、二酸化炭素をこれからも際限なく放出し続けるなら海水面が6~10フィート上昇するという目を覆うばかりの未来図を予測する環境ジャーナリスト、ビル・マッキベンの支持者でもある。

しかしながら、ホワイトは「根拠なき熱狂」に揺れ動くような環境保護論者ではない。米国は2050年までには再生可能エネルギーのみで需要を満たせるようになるとするスタンフォード大学教授マーク・ジェイコブソンの学説を否定してもいるのだ。電気自動車についても、経済性で競争力を持つようになるまで買うつもりはないし、環境保護の志が高いからという理由で、ある会社の株式を買い増す気もない。投資信託を中心に総合的な金融情報サービスを提供するモーニングスター株式会社によれば、ホワイトのポートフォリオの予想収益率は14倍にもなっている。
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翻訳=待兼音二郎

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