ブランド認知に関する同社の調査結果のうち、18~49歳の女性に限定した場合のVSの「バズ・スコア」(そのブランドについて過去2週間以内に何か見聞きしたかどうかを示す)は低下傾向にあり、4月の時点で23となっていることが分かった。このスコアは、最も高かった2年前には31だった。また、この年代の女性のうちVSの商品を購入している人も、2013年と比べて減少している。
VSの売上高が減少し始めたのは、#MeTooと(セクハラなどの被害を見て見ぬふりをするのは終わりにしようと訴える)「#Time’sUp(時間切れ)」の活動が広がり始める前のことだ。だが、ユーガブの関係者は、次のように語る。
「自分のワードローブやブランドにおいて何を重視するかという点について、これらの活動をきっかけにより深く考えるようになった消費者もいるはずだ。政治とファッションは、それほど深く関連しているものではないように思えるかもしれない。だが、政治色を強める世界の中で、これらの結びつきはますます強まっている」
「今年に入って開催された数々の授賞式には、女性たちの大半が自らの政治的見解を明確に示すために黒い服を着て登場した。ファッションショーでも同様に、多くのデザイナーがランウェイを使って、自らの考えを明確に示した・・・影響力を持つ人たちが、ファッションをセクハラや差別、賃金の不平等といったさまざまな問題に関する考えを表すためのプラットフォームとして活用している」
相反する見解
一方、市場調査会社ブランドキーズのロバート・パシコフ社長は、VSの業績と#MeToo運動を関連づけるのは間違いだと考えている。VSの競合他社が好調であることを挙げ、ユーガブの見方に異を唱える。
実際のところ、アスレジャーの人気が続くなか、VSの売上高は1年以上前から低迷している。ワイヤーを使わないブラレットが好調なことを受けて、VSの特徴であるきわどいランジェリーはシェアを奪われ、店舗の来店者数は減少。広告宣伝にかかる費用も、利益率を圧迫している。
パシコフは、「広告が女性より男性を意識しているとの見方はあるが、VSの感覚が鈍いとは思わない。セクシーな写真が#MeTooの対極にあるというのは、安易な考え方だ」と語る。
「女性たちがセクシーな気分になりたくない、魅力的だと思われたくない、と考えているということはないはずだ。調査で回答者の本音ではなく、どう考えているかを聞き出すような質問をすれば、結果としてブランドへの評価は下がるだろう」
「女性たちが望むものとブランドが提供するものは、大抵の場合ひどくかけ離れている。商品に対して不満がなかったとしても、満足度のスコアが当然低くなることは、予測可能だ」
男性に見られるためのデザインだとの指摘もあるVSの下着だが、“文化的なレンズ”は間違いなく、より女性の視線を反映したものへと変化している。そして、文化はさまざまなものと関わり合っている。文化的な変化は、ファッションを見る目や小売業界に何を伝えているのだろうか。考えてみるべきことだ。