世界のプレイグラウンド
プレイグラウンドを実験するにあたって参考にしている事例はいくつかありますが、ここでは2つ触れたいと思います。
ひとつは、ロンドンの建築家集団であるアセンブルです。特に、彼らがグランビーで行なった都市デザインに影響を受けています。建築、デザイン、アートを横断した専門家のコレクティブである彼らは、都市をデザインするにあたって建築起点のアプローチだけではなく、現地でのコミュニティデザインも行なっています。
さらにハンドメイド事業「グランビーワークショップ」によって現地の人にものづくりを教え、オンラインで販売することで、持続可能な地域経済までをもデザインしました。
従来の建築事務所であれば、都市をデザインするためのアプローチは「建築物を手がける」というものだけだったかもしれません。しかし、課題が複雑で抽象的になればなるほど、単一の側面からのアプローチだけでは、本質的な課題解決にはたどり着けない場合が多いのです。
アセンブルのように領域を横断した集団だからこそ、手段を問わない問題解決ができると考え、プレイグラウンドのコミュニティも多様なバックグラウンドが混じり合うように設計をしています。
グランビーの真似ではないですが、私たちが支援しているインドはブッタガヤの学校建設のプロジェクトでは、ビジネスモデル構築から、現地の特産品を使ったブランドづくりまでをコミュニティ内のプロジェクトとして行なっています。ここでは建築家を中心に、起業家や教育系事業家、ファッションデザイナー、研究者らが集い、教育・経済・社会制度の問題解決に取り組んでいます。
もうひとつの事例が、androidの父として知られるアンディ・ルービンが始めている「Playground Grobal」。これはスタートアップの集まるインキュベーションであると同時に、彼らを資金面・技術面でサポートするファンドやコンサルの機能も備えた組織です(名前も私たちのコミュニティと同じです)。
社会に対して従来よりしがらみの少ないかたちでデザインを行おうとする以上、デザイン対象をキュレーションするだけではなく、内発的なモチベーションから生まれたプロジェクトが自走し、社会に実装される状況を生み出すことが理想形だと考えています。
それを実現するには、プロジェクトにあった持続性の担保機能があることが必要です。彼らはファンド機能として、“遊び場”に持続性・実現可能性も担保しています。その手段は投資かもしれませんし、ソーシャルインパクト投資のような課題解決ベースのものになるかもしれません。ともかくこうした資金面でのサポートも必要になってくると考えています。
安藤忠雄の財産
現状、私たちのプレイグラウンドでは、アライアンス機能、コミュニティ機能、創発をサポートするファシリテート機能をベースにしています。近いうちにはもっと自律的にプロジェクトが生まれ、自走していけるようにバックアップできる経済的・人的・技術的体制を整えていくことを目標にしています。
建築家・安藤忠雄は若い頃、空き地を見つけては「こういう建築をつくりませんか?」とその地主を突然訪ねて、自分の理想のプランを提案しにいったといいます。誰から言われるわけでもなく、自分の思想を込めた概念を構築しデザインしていったことは、そのあとの建築家人生の大きな財産になったと語っています。
誰に頼まれるでもなく、内発的な興味や関心事を共有する仲間たちの活動が、仕事につながり、ゆくゆくは社会を変えていく──。そんな“遊び場”から、これからの時代の豊かさを生み出すクリエイションが生まれてくるのだと信じています。