3Dプリントで人身売買から女性を救う英企業、インドから世界へ

Monkey Business Images / shutterstock.com

国際労働機関(ILO)によると、世界では現在、約2490万人が「現代の奴隷」となっている。現代の奴隷制はジェンダーに関する問題でもある。人身売買の被害者の71%は、子どもを含む女性たちだからだ。

3Dプリンターを使ったアクセサリーの製作を通じて女性の教育・職業訓練を行う英スタートアップ、Free-Dの共同創業者であるキャサリン・プレスコットは、これほど多くの若い女性たちが被害に遭う理由の一つは、教育機会の欠如だと考えている。

「高度なスキルを持たず、読み書きの能力識字能力がない女性たちは、就労機会が大幅に限られる。多く仕事を見つけようとする中で、付け込まれ、利用されることになっている」

Free-Dは職業訓練を通じて、人身売買の被害者だけでなく、さまざまな理由で弱い立場にある女性たちの長期的・安定的な就労を支援することを目指している。ホームレスや家庭内暴力の被害から逃げようとしている女性、あるいはその他のリスクにさらされている女性たちを、助けようとしているのだ。Free-Dは英ボーダフォンのシンクタンク、ボーダフォン・インスティテュートのアクセラレーター、F-Laneのメンバーにも選ばれている。

プレスコットは、Free-Dの支援を世界各国に広げることを目指し、すでに事業計画を練っている。5月にはベルリンで開催されるデジタルフォーラムの「Re:publica」、ルクセンブルグで開催されるオープンイノベーションイベントの「アーチサミット2018」で、プレゼンテーションを行う予定だ。

Free-Dの事業モデル

プレスコットは2016年、共同創業者とともにロンドンでFree-Dを創業した。2人はFree-Dの事業を試験的に展開する場所として、インドを選んだ。同国ではおよそ1400万人の女性たちが隷属状態に置かれている。自由を取り戻した女性たちも安全が約束されたわけではなく、そのうちの40%は社会に復帰することができず、再び隷属状態に戻ってしまうとされる。

Free-Dは2017年を通じて、KshamataなどのインドのNGO、同国最大の3Dプリント会社Imaginariumなどのメーカーと連携して、弱い立場にある女性の支援を目的とした1~3日間のワークショップを開催した。

混雑したムンバイで、自作の3Dプリンターを持ってあちこちを移動することは簡単ではなかった。しかし、最初はパソコンを怖がっていた女性たちがすぐに笑顔を見せるようになり、学び、モノづくりをするようになる姿が、プレスコットに力を与えた。

Free-Dは初となる長期の試験プログラムを開始したばかりだ。ムンバイで9か月にわたって行うこの職業訓練プログラムでは、10人の女性たちに3Dプリントに関する研修のほか、精神的サポートも提供。最終的には、Imaginariumでのインターンシップ参加してもらうことになっている。
次ページ > 世界的な人材不足の解決を図る

編集=木内涼子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事