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2018.05.05

ファーウェイ幹部が語る「野心的なスマホとノッチの関係」

(Photo by Chesnot/Getty Images)

ファーウェイのスマホ「P20」シリーズは、同社にとって大きなブレークスルーとなった製品だ。欧米メディアはこれまでもファーウェイ製品を高く評価してきたが、そこには「中国製にしては優れている」というニュアンスが含まれていた。しかし、「P20 Pro」に対しては偏見抜きで最大級の賛辞を送っている。

例えば、P20の暗い場所でのカメラ性能は他社製品の追随を許さない。これは筆者個人の感想ではなく、多くの批評家のコンセンサスだ。また、紫のグラデーションが特徴的な「トワイライト」カラーも多くのメディアが絶賛している。

しかし、ファーウェイのスマホ事業担当バイスプレジデントであるLi Changzhuによると、開発段階でトワイライトカラーの社内評価は低く、実現に至らない可能性が高かったという。同社が深センで開催したアナリストサミットで、Liは筆者に次のように語った。

「開発チームの中ではトワイライトはやり過ぎであり、もっとピュアな色にするべきという意見が大勢を占めた。しかし、私は彼らがユーザーの意見を代表している訳ではないと主張し、反対意見を押し切った」

Liによると、トワイライトカラーという大胆な色の採用は、同社にとって既成概念を打ち破るものになったという。

また、P20 Proには、iPhone Xで大きな議論を呼んだディスプレイ上部のノッチ(切り欠き)が採用されているが、この決断も同社にとって大きな学習体験になったという。Liによると、ファーウェイは3〜4年前にノッチの導入を検討したが、消費者の支持が得られないとして諦めたのだという。

「中国の消費者は対称的なデザインを好むため、ノッチは中国の文化に合わない。人々に受けるのは正方形や丸であり、角が丸みを帯びたディスプレイなどは非常に好まれる」とLiは話す。

筆者はノッチが効力を発揮するのはiOSよりもAndroidだと感じている。中央にスペースが開くことになるが、ノッチがあることでステータスバーは従来よりも少し上に移動してスクリーン面積が大きくなる。

冒険的な判断の重要性

当初は筆者もノッチに否定的だったが、その後、アップルがノッチを導入した判断が正しかったと理解できた。

Liも、「アップルがノッチを採用したのは勇気ある決断だ」と評価する。アップルはかつて、iPhone 7のローンチイベントで「イヤホンジャックの廃止は勇気がいる決断だった」と述べて不評を買った。しかし、Liが「勇気」という言葉を使ったのは皮肉ではなく、本心からだろう。

「我々は保守的過ぎたために、ノッチの先駆者になるチャンスを逃した」とLiは悔しがる。彼によると、ファーウェイには新境地を開く実験的な試みをする精神が足りないという。「我々はもっと冒険的でなければならない」とLiは話す。

その点、P20に3つのカメラを搭載したのは十分冒険的な判断だったと評価できる。中国のスマホメーカーは、過剰なほど多くの機能を端末につめこみがちだ。筆者を含め、多くの批評家がP20のトリプルカメラについても過剰だと感じたに違いない。しかし、筆者は実際に試してみて自分の考えが誤りだったことをすぐに思い知らされた。

編集=上田裕資

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