世界初の実用的な腕時計として知られる「サントス ドゥ カルティエ」。この時計のように、時代を超えて人々に感動と共感を与えるためには何が必要なのか。伝説の飛行家のクリエイティビティを現代に受け継ぐ3人のクリエイターたちが、談論風発を繰り広げた。ここではその鼎談のダイジェストをお送りする。(全文はこちら)
偉大な作品には余白があるドミニク・チェン(以下、ドミニク):今日、感動を生み出す仕組みはある程度メソッド化されてきていますが、歴史に残るような作品をつくるのは難しい。肝心なのは、「好奇心」に強く訴えることができるか。時代の風雪に耐える作品を生み出せる人は、作り手である以前に、旺盛な好奇心を持ち、それを自分の中で常に醸成し続けながらも他者に伝播できる人だと思います。
水口哲也(以下、水口):偉大な作品には必ず余白があります。余白とは、作品を起点に議論が生まれたり、人によって感じ方が違ったりすること。どこから見ても完璧でつけ入る隙がない作品は、一時は評価されても、時間が経つにつれ飽きられてしまうものです。
渡邉康太郎(以下、渡邉):良い映画は観たもの全員を語り部にしてしまうものです。それは語って埋めたくなるような余白があるからなのでしょう。
ドミニク:そういう人たちは映画を見て感動し、何かを学び取り、学んだ喜びを語っているわけです。そこにはつくり手さえ意識しなかった指摘や発見があるはずです。
水口:人間の本能レベルの共感、共鳴を誘うような作品は長く残るでしょうね。私もそういう作品づくりを心がけています。私の場合、自分が体験し、感動したことのエッセンスを抽出するところから作品づくりがスタートします。とてつもなく大変ですが、楽しいプロセスです。
続きは「サントス ドゥ カルティエ」スペシャルサイトにて
ドミニク・チェン◎早稲田大学文学学術院表象メディア論系准教授。NPOコモンスフィア理事。ディヴィデュアル共同創業者。著書に『電脳のレリギオ』(NTT出版)『謎床: 思考が発酵する編集術』(晶文社、共著)など。
渡邉康太郎◎コンテクストデザイナー、Takramマネージングパートナー。代表作にISSEY MIYAKEの手紙のギフト「FLORIOGRAPHY」他、国内外での展示など多数。著書に『ストーリー・ウィーヴィング』(ダイヤモンド社)など。
水口哲也◎メディアクリエイター。Enhance代表、EDGEof共同創業者。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任教授。2016年にリリースしたVRゲーム「Rez Infinite」は米国The Game AwardsでベストVR賞を受賞。