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火と水場と仕組みがあれば、食のコミュニティは継続する

──キッチハイクではどうやって、ごはん会を開催しているのでしょうか。また、サービスを設計する上で意識したことはありますか?

山本:開催までの流れとしては、COOK(料理する人)が日時・開催場所(自宅やレンタルキッチンなど)を決めて、料理と企画をサイトにアップします。あとはHIKER(参加する人)を募るだけ。当日は、食卓をみんなで囲みます。

食でつながるシーンをもっと増やしたいと思い、地域のごはん会である「みんなの食卓」を今年から本格スタートしました。

「みんなの食卓」は、4月に食材(ミールキット)宅配サービスの老舗であるヨシケイさんと事業提携し、開催直前にミールキット(食材)がキッチンまで届くようになりました。そうすると、COOKは手ぶらで行けますよね。

レシピやミールキットを提供することにしたのは、献立作成や買い出しの手間をなくすためです。仕組み化することで面倒なことをキッチハイクで引き受け、COOK(料理する人)もHIKER(参加する人)も、楽しいことだけに専念できるのが理想ですね。

──レシピを考えたり食材を買い出したりするのは、普段あまり料理をしない人にとっては結構ハードルが高いですよね。

山本:仕組み化を徹底しているのは、みんなで食卓を囲む場を継続的に開けるようにするためです。こうしたコミュニティは、主催者など一部のメンバーの熱意に支えられていることが多いですよね。そうならず、定期的に開催できるよう、仕組み化を徹底しています。同じメンバーで何度もごはん会を開くこともありますし、食べる側として参加していた人(HIKER)が、料理をふるまう人(COOK)として、ごはん会を開くことも少なくありません。



──まさに食を通じたコミュニティづくりですね。今後の目標などはありますか?

山本:向こう2年間で、マッチング食数を100倍にできたらいいですね。そのためには食材のみならず、キッチンの確保が不可欠です。食材のヨシケイさんに続き、先日パナソニックさんとの事業提携を発表しました。まずは、神奈川県藤沢市の湘南T-siteに併設した、パナソニックさんのライフスタイル共創型ショップ「KURA_THINK」にて、みんなの食卓を開催していきます。

藤崎:今後もキッチンを起点に広がっていく可能性はあります。いわゆる「街のでんきやさん」は電化製品で困りごとがあった人が駆け込む場所でしたが、いまではそうした機会はかなり減っています。食事をきっかけに人が集まる場所として、新たなコミュニティをつくるようになればいいですね。

食に限らず、生活の中での困りごとを解決したり、新しい出会いがあったりする場所になるのが理想です。

「日常」に偶有性を持ち込みたい

山本:「みん食」が食事にもたらす価値を3つに表すことができます。1つは知らない人とつながる偶然性、2つは一回しかない希少性、3つは、つくり手と食べ手がフラットである当事者性です。コミュニティ醸成に不可欠なおもしろい点だと思います。



藤崎:食事のスゴさは2000年前にも存在し、今後も同じ形で存在し続けることでしょう。個人的にプロセスを共有する最も根源的な方法が食事なんだと思います。

だからこそ、キッチハイクでは大人数でなければできない体験を可能にしたい。例えば、豚の丸焼きやマグロの解体は、大人数で食卓を囲むからこそ可能な食事です。「豚って本当に部位ごとの味が違うんだ」という体験は一人で食べていたら気づけないですよね。

そういう新たな学びを得られるのが、プロセスの力です。

──みんなで食べるとご飯が美味しくなるだけでなく、そもそも大人数じゃなければ不可能な食事もあるということですね。クックパッドや食べログなど、食に関するサービスはこれまでもたくさんありましたが、やはり食に関する「場」を提供するというのが新しい点ですよね。

山本:食に関する既存サービスの多くは、レシピサービスのような「料理する人」向けか、飲食店レビューサービスのような「食べる人」向けのどちらかでした。一方、キッチハイクの特徴は、つくり手と食べ手の両者を緩やかにつなげる点にあります。

食の現場をみんなでつくる「みん食」では、誰もが与える側であり、与えられる側でもある、言い換えれば全員が当事者なんです。料理をつくる人と食べる人をシームレスにつなぐことで、食の在り方を捉え直すことができる、また人のつながりを整えることをできると思うんです。

藤崎:食の前ではみんな平等ですからね(笑)。食事はハレ(非日常)とケ(日常)の分類でいえば後者に当たりますが、生活の基本である衣食住の中でも、最も回数が多く、人に頼りやすいんです。だから食事をアップデートすれば、日常が豊かになる。僕たちが目指しているのは、ケを非日常にすることなんです。

山本:新たな出会いが生まれるコミュニティの良さは、日常では考えられなかった偶然の出来事が起こりうること。個人最適化が進んだ現代では偶有性はますます減っています。フェスのようなハレの場でなくても、毎日欠かさずとる食事から予想外の出会いや出来事が生まれれば、それだけで世の中は楽しくなりますよね。

文=野口直希 写真=小田駿一

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