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2018.04.27

深まる米中「テクノロジー冷戦」アップルにも大きな打撃

Benny Marty / Shutterstock.com


iPhoneの製造コストも上昇

アップルも打撃を受ける可能性がある。同社製品の多くが中国で組み立てられており、部品の多くは輸入品のため、追加関税によってiPhoneの製造コストが上昇してしまう。また、中国の消費者の間ではナショナリスティックな運動が起こっており、SNS上ではマクドナルドやKFC、アップルなどの製品のボイコットを呼びかける声が広がっている。

中国版ツイッターの「Weibo(微博)」には「我々は一丸となってiPhoneなどの米国製品をボイコットするべきだ」「私はファーウェイを使っていることを誇らしく思う」といったコメントが投稿されている。

中国の政府系メディア「グローバルタイムズ」で編集長を務めるHu Xijinは、自身のブログでZTEやファーウェイなどの中国テック企業を支持するよう読者に呼びかけた。

過去にも中国で愛国的な動きが広がり、外国企業が打撃を受けたケースがある。例えば、中国政府が安全保障上の脅威だと考える米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を韓国が配備した際、ボイコット運動によって韓国のロッテグループは中国で展開する店舗の閉鎖に追い込まれた。その後、両国政府は関係修復で合意している。

「過去のナショナリスティックなボイコット運動は大した効果を発揮してこなかったが、昨年の韓国企業に対する運動で全てが変わった。米企業は非常に大きなリスクにさらされている」とコンサルタント会社Control Risks のAndrew Gilholmは指摘する。

緊張が高まる中、米財務省のムニューシン財務長官は、貿易交渉のため北京を訪れる可能性を示唆し、中国商務部はウェブサイト上でこれを歓迎するコメントを発表した。

中国政府は「テクノロジーの自前化」呼びかけ

しかし、一部のアナリストは米中ともに譲歩しないと見ている。中国は最近、金融分野での規制緩和や米国製自動車に対する関税引き下げを発表したが、米国にとっては不十分な内容だ。一方、中国は国家戦略である「メイド・イン・チャイナ2025」に記載されている通り、ロボティクスやバイオテクノロジー、AIなど10の重点分野で覇権を握ることを目指しており、今後も自国企業への保護政策を継続することが予想される。

「中国政府は、特定分野において譲歩する用意がある。しかし、米国は方針を変え、中国の産業政策やイノベーション計画といったより根本的な部分の改善を要求している。これらについて中国は大きな譲歩をしないだろう」とGilholmは話す。

ZTEに対する米国の措置は、中国の姿勢を硬化させるだけだ。Canalysのリサーチ・ディレクターであるNicole Pengによると、米国製ハイテクチップは替えが効かないため、世界4位の通信機器メーカーであるZTEは「生死に関わる状況に追い込まれている」という。

また、コンサルティング企業「IHS Markit」のチーフ・エコノミストであるRajiv Biswasによると、台湾や韓国のサプライヤーは既存の受注に対応するのに手一杯で、ZTEに援助の手を差し伸べる余裕はないという。ZTEは、米国の措置を「極めて不当で受け入れがたい」と批判しているが、別の声明では「措置に従い、打開策を模索中」だとしている。

共産党の機関紙「人民日報」は、中国企業に対してバリューチェーンの上流へ進出し、高性能チップの製造を自前化することを呼び掛けている。

「政治的な争いに直面する中、グローバルなサプライチェーンに依存することは大きなリスクだ。中国の技術発展は、米国の要因によって影響を受けるべきではない。中国企業は、独自のテクノロジーを開発する決断を迫られている」と同紙は述べている。


編集=上田裕資

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