ビジネス

2018.04.27

深まる米中「テクノロジー冷戦」アップルにも大きな打撃

Benny Marty / Shutterstock.com

米中の貿易戦争が激しさを増す中、報復の連鎖が米国のテック企業に打撃を与えることが懸念されている。

米国は総額で約1500億ドル(約16.3兆円)相当の中国からの輸入品に関税を課すことを検討しているが、さらに中国のテック業界にも矛先を向け始めている。米国商務省は先週、中国通信機器大手の「ZTE(中興通訊)」が対イラン制裁に違反したとして、同社が米企業から製品を購入することを7年間禁止すると発表した。さらに、中国による米企業の買収を制限するため、「国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)」を発動した。

アナリストらは、今後中国がアップルやクアルコムなど米国のテック企業を標的に報復措置を取り、これらの企業の収益や投資計画に悪影響を及ぼす可能性があると指摘している。

中国政府は、大豆やボーイング製の航空機などを含む米国からの輸入品約500億ドルに追加関税を課すことを発表した。しかし、昨年の米国の対中輸出額は1300億ドル余りで、報復合戦がさらにヒートアップした場合に関税を課す物品に限りがある。そこで、中国政府が目を向けたのが米国のテック企業だ。

「米国による1500億ドルもの中国製品への関税導入に対抗するために、中国政府は米企業によるM&Aの承認を遅らせるなど、新たな手段に出ている。こうした動きは米国のテック企業に打撃を与えかねない」と米中ビジネス協議会のJacob Parkerは話す。

クアルコムは5億ドルの売上減

既に影響は出始めている。米企業によるZTEへの製品販売が禁止されたことを受け、チップメーカーの「クアルコム」は売上高が5億ドル減る見通しだ。調査会社「Canalys」によると、チップの単価は15〜20ドルで、ZTEが昨年出荷した4020万台のスマートフォンのうち65%にクアルコム製チップが搭載されているという。しかし、クアルコムにとってより深刻な問題は、中国政府による買収承認の遅れだ。

同社は、オランダの半導体大手「NXP」を440億ドル(約4.8兆円)で買収することを計画している。クアルコムは買収に向けて、既に9つの独禁当局の承認のうち8つを取得済みで、中国の当局が承認すれば全ての審査をクリアすることになる。しかし、中国当局はNXPの顧客に多くの中国企業が含まれることを理由に承認を遅らせている。

NXPの買収はクアルコムの将来戦略において極めて重要であり、頓挫すれば同社にとって大きな打撃になる。中国商務部は4月19日、「予備的な審査の結果、結論を出す上で困難な問題が明らかになった」と述べ、クアルコムに申請書の再提出を求めた。

7月までに承認が下りなければ、クアルコムはNXPに対して20億ドルの違約金を支払い、買収計画を破棄しなければならない。
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編集=上田裕資

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