日本初の「クラウドファンディング学習」で中学生が学んだこと

和歌山県立日高附属中学校の新井先生(左)と生徒たち


「リターンの発送作業をしていたら、愛知県や東京都の住所もあってびっくりしました。あと、大阪でのイベント当日に、クラウドファンディングを見てブースに来てくれた人もいて、とても嬉しかったです」(メンバーだった中学生)



参加した中学生たちは、いま高校1年生。これが成功体験になったらしく、高校生になってからはさらに行動範囲を伸ばし、地域のイベントなどに積極的に関わっているようだ。「チラシ配りや大変なこともあったけど、もう一度クラウドファンディングをやって、次回はもうちょっと頑張って目標金額達成したいです!」と、いまも語る。

「やりたいことがあるけどお金がない」と多くの人はここで諦めてしまうが、「もしかしたらクラウドファンディングでやれるかも!」という選択肢を知っている強み、生徒たちの今後の挑戦もとても楽しみだ。

前出の新井先生によると、日本初の取り組みということもあり、当初は学校から心配の声も上がったという。

「中学生がお金を扱うのはどうなのか」「お金が集まらなかったらどうするのか」「わざわざインターネットを活用する意味はあるのか」。しかし、新井先生の熱意に打たれ、学校側も少しずつ動いてくれるようになった。

ところが新たな問題も立ち上がった。新井先生が代表でプロジェクトを立てると、公務員の副業規定に引っかかるかもしれないというのだ。その話を聞いた地域の方が、代わりに代表者になってくれることにもなった。このようにたくさんの人の協力で、皆の想いが積み上がって、プロジェクトは実現した。

「こんな中学生活が過ごせると思わなかった」


3000円の支援のリターンとして、メンバー全員がメッセージを手書きした寄せ書きを用意した

取材中、かつてのメンバーの口からポロっと出た言葉に、新井先生も少し涙ぐんでいた。

また、「大変なことだけど、このクラスだったらやれると思った」という新井先生の言葉に思わず泣き出す生徒もいた。先生と生徒の信頼関係、そして地域の人たちの協力があってできたこのプロジェクト。人の想いを積み上げる。まさにクラウドファンディングの本質ではないだろうか。

このプロジェクトをきっかけに地域がどうなっていくのか、ひき続き楽しみに見守っていきたい。

連載:地方創生のキーマン
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文=小幡和輝

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