インヴァランスが目指すスマートホームのその先とは

小暮 学 インヴァランス代表取締役


alyssa.、そしてCASPAR AIは居住者の習慣を学習する

「CASPARはすでに米国で300世帯にローンチ済みの技術で、今年も2500世帯が建設予定になっています。その技術を日本の物件に実装していくのがインヴァランスの役割。1世帯に約80個のセンサーが必要になり、後から設置することも可能ですが、やはり建設段階から設置されているのが理想です」

センサーは温度、湿度、照明などを取り込むだけでなく、音声や映像、居住者の動作まで把握していく。そのデータを基に室内に設置されたAIが分析、ディープラーニングを行うのだ。

「最初の日は、起床時に“CASPAR、おはよう、カーテンを半分開けて”と指示することによってIoT対応カーテンは開きます。しかし同じ動作を繰り返すと4日目に起きたときには“CASPAR、おはよう”の声だけで、半分だけカーテンを開けてくれるようになるのです」

住まいが居住者の習慣を学習していく。使えば使うほど、そのユーザーに適した進化を遂げていくのがCASPARなのだ。その経験は、従来の住環境に求められていたものとは大いにかけ離れた体験となる。

前述のスマートフォンアプリalyssa.を使用した動作もCASPARは学んでいくことになり、ユーザーがしなくてはならないことは、日に日に減少していくという。その先にあるのは、瑣末な面倒をすべて家任せにして自由になった居住者の姿だ。

「ルーティーンはAIに任せて、人間はもっと大切なことをするべきなんです」

日本でこのAIホームが実現していくと、不動産物件の価値観に激震を与えることは確かだろう。パラダイムは変容し、新しい不動産のあり方が問われるはずだ。

「今年の春に、まず分譲物件3戸にCASPARを実装します。分譲では世界初です。すべてのIoT機器がCASPARを介してつながります。インターフェイスは音声認識。技術的な点でいうと、それらの接続もすでに帯域が圧迫されているWi-FiやBluetoothではなく、無線通信規格・Z-Waveを採用しているので接続が不安定になりにくいのも特徴です」

変わらなくてもよい業界と言われ続けてきた不動産業界。実際にそれでもビジネスとしては現在も十分通用する。しかし小暮は先行投資だとしても、怖れなかった。

「もっと居住空間をシームレスに扱えるように、住環境をシフトさせていきたいんです。パソコン仕事がいつの間にかスマホでも可能になったように、それまでスマホを使っていたこともノーハンドで、住空間のCASPARに頼めばいいことになる。そんな未来はやはり楽しいと思うんですよね。テクノロジーは人々に自由を与えてくれます。AI導入によって不動産の価値もこの先再構築する必要が出てくるでしょう。そんな未来を、僕は信じているんです」



小暮 学◎インヴァランス代表取締役。1976年生まれ。不動産投資会社営業職を経て2004年、28歳で独立。投資不動産会社/IoT開発企業であるインヴァランスを設立。代表取締役として年商144億円の企業に育て上げる。

text by Ryoichi Shimizu photographs by Shuji Goto hair & make-up by Ikumi Shirakawa edit by Akio Takashiro

この記事は 「Forbes JAPAN 「地域経済圏」の救世主」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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