安倍首相も訪問のトランプ別荘、30年で160億円の価値上昇

ドナルド・トランプ大統領の別荘、マール・ア・ラーゴ(Photo by Joe Raedle/Getty Images)

4月17日、日本の安倍晋三首相と昭恵夫人をフロリダ州の別荘「マール・ア・ラーゴ」に招き入れたドナルド・トランプは上機嫌でこう言った。「世界中のリーダーたちがこの別荘に来たがるんだ。彼らはみんな気に入ってくれるし、私もこの場所が大好きだ」

スペイン語で「海を望む湖」を意味するマール・ア・ラーゴは、不動産王であるトランプのキャリアの中で、最も成功を収めた物件の一つといえる。

トランプは1985年に約1000万ドル(約10億9000万円)でマール・ア・ラーゴを購入した。その内訳は500万ドルが巨大な邸宅に、300万ドルが豪華な内装に、200万ドルがビーチに面した敷地に支払われたという。

フォーブスは現在のマール・ア・ラーゴの不動産価値を1億6000万ドル(約174億円)と試算している。これは購入価格の16倍に達する金額であり、トランプは1億5000万ドル(約163億円)のリターンをこの物件から得たことになる。

16倍というリターンは、同期間のS&P 500の上昇率の12倍を大きく上回る。背景にはトランプがこの邸宅を数十年間の間にプライベートクラブに改装し、今や「南部のホワイトハウス」として知られる超有名物件に押し上げたことがある。

マール・ア・ラーゴは1920年代にフロリダの女性富豪のマージョリー・メリウェザー・ポストが、大統領や政府高官向けの冬の別荘として建設した。外壁を飾る石材はイタリアから3隻の船で輸送され、天井にはイタリアの有名美術館を模した金箔の装飾が施された。また、エントランスには16世紀のローマ彫刻が飾られた。屋敷の内部には58のベッドルームがある。

1973年にポストが死去したのち、遺族はマール・ア・ラーゴを政府に寄贈した。しかし、邸宅の維持費があまりに巨額なため、政府は1981年にマール・ア・ラーゴをポストの遺族の財団に返還した。その4年後にトランプがこの邸宅を購入したのだった。

その後、1995年にトランプはマール・ア・ラーゴを会員制のプライベートクラブに改装し、海に面したプールやスパ、テニスやクリケットのコートも新設した。2005年1月には広さ約1800平方メートルの舞踏会場を作り、そこでトランプはメラニアと結婚式をあげた。式にはビル・クリントンとヒラリー・クリントンも招かれた。

米国大統領となったトランプはマール・ア・ラーゴを度々訪れ、2017年1月の大統領就任演説の草稿の準備もここで行った。4月6日、トランプはここに中国の習近平国家主席を招き、ディナーをともにした。そして、デザートを食べながらシリアにミサイルを発射したことを習に伝えたという。

今や米国の新たな国家権力の中枢となったマール・ア・ラーゴが、ビジネス的価値を増したことに疑いはない。トランプの大統領就任以来、マール・ア・ラーゴの入会費用はこれまでの2倍の20万ドルに値上げされた。会員制クラブの売上は2016年に2900万ドルに達したと推定され、前年度から25%の上昇だった。

フォーブスはトランプの大統領就任以降、マール・ア・ラーゴの不動産価値が1000万ドル以上値上がりしたと試算している。世界中の大金持ちたちがクラブに入会し、大統領と語り合うチャンスをうかがっている。

20世紀初頭に、ここを大統領がくつろげる場にしたいと願ったポストの夢は現実のものになった。かつて1000万ドルで購入した豪邸は、今や米国大統領となったトランプに1億6000万ドルもの資産をもたらすことになった。

編集=上田裕資

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