ビジネス

2018.04.26

非連続的に新しい価値を生み出すための飛躍|出井伸之

クオンタムリープ代表取締役 出井伸之氏


新しい価値をもつ新しい時代に

先日、テレビを観ていて思ったことがある。2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震などの天災時において、そして現在に至っても、国は平常時の法律や制度にのっとって対応していることに、あらためてとても違和感を感じた。

いま日本中で取り組んでいる働き方改革についても、表層的な変化では改革とはいえないと思う。次のパラダイムにどのように変わるべきかを真剣に考えなければいけない。新しい付加価値を持つ新産業を生み出すための改革が必要なのだ。産業の移り変わりとともに価値も変化しビジネスモデルも変わる。ものづくりの時代には働き方の改革が価値の向上につながったかもしれないが、情報時代や新しいテクノロジーの時代には、かなり的外れな気がしている。

ピンポイントの取り組みではなく、行政や法律、社会の仕組みから変えていかないと、日本は変われない。根本から変革していかないとピンチに陥ると私は思う。

いまの10代20代が大人になった時にどんな社会になっているかを、私は常に考える。新しい良さというのは、実は古い良さを学ばなければ知ることができない。だからこそ、シニアとジュニアの組み合わせは重要だと思う。

私たちは、新しい価値を生み出すために、「クオンタムリープ・アドベンチャービレッジ」というプラットフォームを整えている。今までの連続的な産業に加えて、新しいものを飛躍的に生まれやすくする環境のエコシステムビレッジだ。そこには、シニアもジュニアも、ベンチャーも大企業もいる。本質的な変革が求められている今、ビレッジからそれを生み出していく。この秋には始動する予定だ。

これからの時代に求められる要素とは

連続的でなかなか変われないのが社会だ。なぜなら動いているものは動き続けようとするイナーシャ(慣性)によって、以前から継続的にある力が作用し反動がついているからだ。要するに、坂道でボールを転がしたら簡単には止まらないというと、わかりやすいだろう。

一方で、技術は非連続的だ。新しい技術は過去がないため、すぐに関われるベンチャーが飛躍を起こしやすい。大企業が非連続を起こすには、今までのものを思い切って捨て、新しいことをしなければいけない。インターネット証券大手のマネックスグループが仮想通貨事業への参入でブロックチェーン技術踏み出す決断をしたのも、まさにそうだ。どれだけ世の中に影響を与えたか。過去の継続をしていてはそのうち衰退していくかもしれない。非連続なことをしたからこそ、評価は高い。

これからは連続的な変化に加え、跳躍した変化を起こしていかなくてはいけない。簡単ではない。

このまま世の中が変わってくると、資本主義そのものも変化を求められるようになると思う。では、変わるもの変わらないものは何なのだろうかと考える。人の心は揺らぐが変化はしない。思いや信念は強い。そういった意味でも、これからは「個」が重要な時代になると思う。新しいバリューを日本に生み出していくためには、個が持つ“動かす力”が必要だ。そういった力のある人がベンチャーを起こし変革していけるのだと思う。特に若い人からたくさん生まれてほしいと願っている。

これまで何度もパラダイムシフトをして産業が変化してきたように、技術はさらにスピードを上げて進歩している。全く新しいテクノロジーが世の中に普及して「クオンタムリープ」の飛躍は起きる。インターネット普及時のように乗り遅れるという過ちを繰り返してはならない。新しい価値を生み出し活躍できる人が日本から現れるのを楽しみにしている。

The IDEI Dictionary 〜変革のレッスン〜
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インタビュー=谷本有香 構成=細田知美 撮影=藤井さおり 取材協力=Quantum Leaps Corporation 撮影協力=KNOCK CUCINA BUONA ITALIANA

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