米国で広まる性感染症、予防のカギは「コミュニケーション」

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性感染症(STI/STD)への感染率が記録的に高まっているなか、業界が行った新しい調査により、多くのSTD感染リスクが高い人々が検査を受けていない、また受ける必要がないと思っていることがわかった。

医療検査を行う2大企業のひとつ「Quest Diagnostics」は、若い女性やその母親ら計4500人以上を対象にした調査を行い、人々のSTDに関する行動や考えを調べた。レポートは論文審査のある専門誌に掲載されたわけではないが、代わりにAurora Research & Consultingによって審査が行われている。

回答者は4742人。15〜24歳の女性3414人(うち1500人が性的に活発であると答えた)、15〜24歳の娘をもつ母親1016人、かかりつけ医または産婦人科の医者312人が調査に参加した。

その結果は驚くべきものだった。25歳以下で性的に活発な女性の62%が、STDに感染するリスクを感じていないと答えた。また最後に行ったセックスでパートナーがコンドームを使用したと答えたのは、10人に4人しかいなかった。米国ではいま、この数十年で最もSTDが蔓延しているにもかかわらずだ。

センシティブで、話しにくいもの

米疾病予防管理センター(CDC)によれば、2016年にクラミジア感染症にかかった人の63%が15〜24歳だったという。その数100万人以上、性的に活発なすべての女性の3.4%を占める。

同じように、2016年に淋病にかかった約500万人、梅毒にかかった2万7000人以上が15〜24歳であり、その比率は高まっている。2015年から2017年にかけて、淋病への感染件数は19%上昇。梅毒は19%、先天性梅毒は28%上昇している(先天性梅毒は母親から子どもへ感染するもので、病気にかかった子どもはしばしば障害を伴って生まれる)。

「STD感染のリスクをもつ人々は、自分がリスクのある状態にいることを理解していないようです」。調査を行なったQuest Diagnosticsで女性の健康に関する医療ディレクターを務めるダミアン・P・アラギア博士は言う。しかし、医療供給者と患者の両者が性について話すのを気兼ねしていることが、この問題の要因になっているかもしれないと彼は加える。

「患者も医師も、STDについて話すのをためらいがちなため、両者の間で十分なコミュニケーションが行われていないのです。多くの場合、STDに関するトピックはセンシティブで、話しにくいものですから」

しかし、今回の結果から、受診率が低いことが原因でSTDの感染件数が増えていると言うことはできない。

「Quest Diagnosticsのデータは、ほかの文献の結果とも相関しています」。マウントサイナイ医科大学の産科学・生殖科学の助教、エリック・M・ガンズ博士は言う(ガンズ自身は今回の調査にはかかわっていない)。「しかし、今回の調査から因果関係を述べることはできません」

調査を受けた女性の半数が、医者や看護師にSTD検査を受けたいかを尋ねられたことはないと答えている。CDCは、25歳以下の性的に活発な女性は感染症の検査を毎年受けるべきだと推奨しているにもかかわらず、実際に推奨されていないのは興味深いことだとガンズは考えている。 「私はスタッフへの研修や生徒への授業で、STD検査は人々が毎年行うような当たり前のものにしようと教えてきました」とガンズは言う。
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翻訳・編集=宮本裕人

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