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2018.05.01 07:30

米「歯ミガキ粉」業界を変えた男に学ぶ成熟市場のぶち破り方


成熟した市場でいかに戦うか

既に成熟した生活必需品の市場で新ブランドを成功させるためには、何が重要なのか? ドゥビツキーがハローで最も重視したのは、歯磨き粉の成分だったという。前出のトリクロサンやサッカリンなどの人工甘味料、マイクロビーズ、パラベン、グルテンを使用せずに、歯磨き効果があり味もいい商品を開発するため、ドゥビツキーは工場とやりとりを重ねた。

歯磨き粉の開発は決して容易ではなく、製造する工場もアメリカ食品医薬品局(FDA)の認可を受けている必要がある。「工場には『奇抜で斬新なアイデアがあれば、我々に一番先に教えて欲しい』と頼んでいる」とドゥビツキーは話す。

ハローの商品はすべて米国製だ。黒地に白のロゴが目立つチューブに入った5.99ドルのフッ素不使用の歯磨き粉は、活性炭、ミント、ココナッツオイルが配合されており、中身も黒い。2歳以下の乳幼児用の歯磨き粉は、オーガニックのリンゴで甘みを加えている。現時点では歯磨き粉以外の商品はマウスウォッシュと歯ブラシのみだが、他のオーラルケア用品も開発中だという。

昨今、オーガニックや自然派の原料を使った日用品ブランドは珍しくない。ハローがそれらの多くと異なるのは、富裕層やミレニアル世代などの限られた層をターゲットにしていない点だ。

ハローの歯磨き粉は自社オンラインショップの他、ターゲット、CVS、セイフウェイ、クローガー、スーパーバリューといった庶民派のスーパーマーケットで売られている。「どれほど中身が素晴らしかろうと、1%の人しか買えないものは良い商品ではない」とドゥビツキーは語る。

ドゥビツキーがメソッドに携わっていた2000年代初頭、小売業者は新しい日用品ブランドを売り出すことに対して消極的だった。長年同じブランドに親しんできた消費者が、未知のブランドに手を伸ばす可能性は低いと考えられていた。

しかし、ハローをはじめとする新興ブランドが老舗と並ぶ人気を獲得するようになった現在、小売業は新鮮なブランドや商品を求めている。いまや新ブランドは、小売にとってのFOMO(fear of missing out=乗り遅れることに対する恐怖)を象徴する存在だとドゥビツキーは言う。

「小売店の経営現場では『扱うのは危ない』という意識から『扱わなければ危ない』というマインドセットに180度変わったんだ」と彼は話した。

編集=海田恭子

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