だが、その事実がクレッグ・ドゥビツキーを止めることはなかった。ドゥビツキーが歯磨き粉ブランドの創業を思い立ったのは5年前。大手の歯磨き粉のパッケージがどれも似通っていることに気づいた時だった。
ある日、ニューヨークのチェルシー地区のドラッグストアに入った彼は、「どの歯磨き粉にも抜き出した歯のイラストが載っているのを見て、なんてクレイジーな光景だろうと思った」と振り返る。
現在52歳のドゥビツキーはかつて、カラフルな容器の自然派リップバームで有名なスキンケア用品ブランド「eos」を共同創業した経験がある。また、自然派のハンドソープや洗剤のブランド「メソッド(Method)」の初期出資者の一人でもあった。ドゥビツキーはそれらのスタートアップでの経験を、新しい歯磨き粉作りに注ぎ込んだ。
その結果、生まれたのが「ハロー・プロダクツ(Hello Products)」。衛生用品らしからぬ間の抜けたそのブランド名を冠した歯磨き粉は、トリクロサン(薬用石鹸などに含まれる抗菌剤)やサッカリンなどの化学物質を排した体にやさしい成分と、シンプルなパッケージデザインが売りだ。
「(必要に迫られて購入している)日用消耗品を、人々が買いたくなるものにしたかった」とドゥビツキーは言う。
創業から5年、ニュージャージー州モントクレアを拠点とするハローは、自然派のオーラルケア用品ブランドでは「トムズ・オブ・メイン(Tom’s of Maine)」に次ぐ第2位の企業に成長した(トムズ・オブ・メインは2006年にコルゲート・パーモリーブが約1億ドル=約108億円で買収)。今年の年商は2000万ドル(約21.5億円)を見込んでいる。