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テーパードパンツは、最初は2サイズしか作っていなかった。だが、実際に作ったものを顧客に届けたところ、さまざまなフィードバックがあったという。

「もう少し細身のものがあればうれしい」「産後なので骨盤が入らなかった」。

2サイズの展開では全然足りないことに気づき、慌ててさらに2サイズを追加した。顧客からのフィードバックをもとに、丁寧に改善を繰り返していく。その姿勢について、清水はこう語る。

「ユーザーファーストが当たり前のこの時代においても、まだまだ作り手側の事情に左右されていることがたくさんあります。私たちは、どれだけ大変で時間がかかったとしても、とにかくお客さまに寄り添ったブランドにしたかったんです。

あとは、アパレルの経験者じゃないから前提知識がなく、お客さまに教えてもらわないと、何がいいのか分からないんですよね(笑)」(清水)

自分たちの原体験があるからこそ、経験者じゃないからこそ、何よりも顧客の声を大切に商品を作っていく。そんな姿勢が、COHINAが愛されるひとつの理由なのかもしれない。

インスタライブは週7日。狭く深いファンが生まれる理由

20代の、ソーシャルネイティブな世代が作っているからこそのブランドの広め方も特徴的だ。ツイッターやLINE、インスタグラムなど、SNSは当たり前のように使いこなす。

その中でも、インスタグラムの機能である「インスタライブ」でのライブコマースに力を入れているという。

ライブは週7日間、毎日欠かさず配信し、自分たちの脳内を顧客にダイレクトに伝えていく。どんな思いでブランドを作っているのか、どんな新作を考えているのか。作り手自らが積極的にコミュニケーションすることで、顧客のニーズを欠かさずに拾い上げる。



そうやってできたブランドのファンは、熱量がものすごく高い。

「“こんなブランドずっと待ってました”とか、“COHINAに出会って私のファッション人生変わりました”とか言ってくださるんですよ。そういう言葉はものすごく励みになりますね」(田中)

「23時など、夜遅い時間にインスタライブをすると、お客さまが心配してくれることもあります」


https://twitter.com/aoishmz/status/959612740221284352

COHINAは、商品を購入しすぎてお金がなくなる「COHINA貧乏」という言葉が顧客の間で生まれるほどリピート率が高いという。

インスタライブという「場」を用意して、そこに集まった顧客のロイヤリティを高めていく。小柄向け女性服というコンテンツを中心に、作り手と顧客、そして顧客同士のコミュニケーションを生み出していくその姿は、ある種の「コミュニティ」とも言えるのかもしれない。

「世界観を作りたい」のではなく「あるべきものを作りたい」

近年、ハヤカワ五味さんの「feast」や、赤澤えるさんの「LEBECCA boutique」など、若い女性が手がけるファッションブランドが増えている。そんな彼女たちと自分たちの違いを、2人は「世界観があるかないか」だと話す。

「ハヤカワ五味さんのブランドは、胸が小さいという“コンプレックス”が起点。コンプレックスからスタートしたという点ではCOHINAと共通しているんですが、ハヤカワさんのブランドは、それに加えて世界観をとても大切にされていると思うんです。

でも、私たちは世界観を作りたいというよりも、あるべきものが作りたいだけ。自分でも着られる普通の服がほしいという、困りごとの解決です。だから、トレンドを取り入れつつベーシックなものが作れたらいいと思っています」(田中)

2人とも、ツイッターのフォロワーは500人前後。憧れが中心にブランドが形成されていくことが多い昨今、インフルエンサーじゃない2人は、共感を中心にブランドを作る。

ブランドに共感を生むためには、顧客と同じ目線に立ち、徹底的に顧客のことを理解する姿勢が必要だ。そのことに、彼女たちは計算することなくごく自然に気づいている。そうしてできたCOHINAとそのファンの間には、いち「顧客」という関係を超えた、人間的なつながりがあるように感じられた。

特別じゃなくても、経験や知識がなくても、届けたい誰かのために一歩ずつ愚直に前に進んでいく──。彼女たちの等身大の思いから始まったブランドが、今日も小柄な女性たちを熱狂させている。

文=明石悠佳 写真=小田駿一

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