ケスラーは自身が監督した2012年の短編映画「Montauk」(原題)と、長編映画用脚本「The Montauk Project」のアイデアをダファー兄弟に無断で使われたと主張。陪審裁判と賠償金などを要求している。
訴状によると、ケスラーは2014年にトライベッカ映画祭のパーティーで兄弟に会い、前出の作品の内容を開示した。その話し合いは、内容をケスラーの許可なしには使わないという業界の暗黙の了解のもとで行われたという。
ケスラーは盗作を裏付ける証拠として、「Montauk」と「ストレンジャー・シングス」のストーリーや設定上の共通点を挙げている他、「ストレンジャー・シングス」のネットフリックスでの製作発表時のタイトルが「Montauk」であったことなどを述べている。
はたしてケスラーに勝ち目はあるのか? この類の訴訟は立証が難しく、確固たる証拠が必要だ。両者間に明確な合意がなかった場合、ケスラーは次の3点を証明する必要がある。
1. ケスラーは、ダファー兄弟が彼のアイデアを使う際には対価を支払うという条件を提示した上で、アイデアを開示した。
2. ダファー兄弟は、対価に関する条件を事前に知っており、自らの意思でケスラーのアイデアを聞いた。
3. ダファー兄弟は、ケスラーのアイデアを価値あるものと見なし、使用した。
ダファー兄弟がケスラーのアイデアを使用したというのはあくまでも推論であり、直接的な証拠はない。そのためケスラーは、「ストレンジャー・シングス」と「Montauk」の間に実質的類似性(まったく同一ではなくとも、真似をしたに違いないと思えるほど表現が類似していること)があることを示す必要がある。
カリフォルニア州の法律では、2作品の間に実質的類似性があるか否かは、出てくる単語やフレーズ、アイデアに加えて、作品の特徴の類似性によって判断される。基準となるのは、専門家による分析ではなく、平均的な読者や視聴者が2作品を比べた場合にどの程度類似していると感じられるかだ。
「ストレンジャー・シングス」と「Montauk」はいずれも政府の施設の周辺で起きた超常現象を扱っており、少年が異次元の世界に連れ去られ、モンスターが登場するなど、物語上の共通点は多い。企画段階のタイトルも似ていることから、裁判が行われる可能性はある。
ただし、仮に実質的類似性があると判断された場合でも、ケスラーが金銭賠償を受けられるとは限らない。ケスラーとダファー兄弟が2014年に会った際に、両者間にどのようなやりとりがあったかが争点になる。
なお、ダファー兄弟は4月4日に代理人を通じて盗作疑惑を否定しており、ケスラーの短編を観たこともなければ、ケスラーと作品について話したこともないと主張している。
また、米芸能サイトの「TMZ」によると、ダファー兄弟はケスラーの映画が作られる以前の2010年、モントークの町やモントーク実験(the Montauk experiment)に触れたメールをネットフリックスに送っているという。「モントーク・プロジェクト」自体は、ニューヨーク州モントークにある空軍基地で米国政府が極秘に行ったと伝えられる超能力研究の名称で、1982年に「The Montauk Project: Experiments in Time」という本も出版されている。