ビジネス

2018.05.10

なぜトップに立ってもなお、パラレルワークを続けるのか?

リンクトイン・ジャパン 代表 村上臣


例えば、IT企業の社員はアパレルや農業など異業種との“化学反応”が期待できる。前者ならeコマース、後者の場合はドローンを使った管理や農薬の散布などが考えられる。金融関係者の知識は、経営や資金調達を考える起業家に歓迎されるだろう。村上はリンクトインなら、業界や企業の規模に関係なく、さまざまな「人」を結び付けられると確信している。

とはいえ、情報収集や名刺交換で終わっては意味がない、とも釘を刺す。若手起業家にメンタリングする際も、得た知識を消化不良にせず、出会いをアイデアにつなげるように、と伝えるそうだ。「大事なのは、自分の見立てがどうか、ということ。インフォメーションとインテリジェンスはまったく別の物ですから」

そして何よりも重要なのが、「働く意味」を問い直すことだ。村上は「人と会社の主従関係が逆転してしまった」と話す。

「そもそも企業の原点とも呼べる『東インド会社』は“宝探し”のようなプロジェクトで、船が持ち帰った収穫物を分配する際に揉めないために生まれたのが株式。ところが会社が大きくなり、人はその“生命”を維持するために働くようになってしまった。人が船に乗っ取られたのです。それをもとに戻しませんか、というのが私の提案です」

では、村上にとっての働く意味とは?「1人ではできないことを、チームの力や会社の資本力を使って実現し、社会の役に立つことが仕事の醍醐味。すべての仕事に打ち込んで楽しく働きたいですね」

もちろん、趣味のドラムも─。

撮影の終盤、カメラマンの「OK」の合図と共に、村上はランチタイムの人通りを気にすることなく、ドラムを全開に鳴らした。そして、吹っ切れた顔を見せて言った。

「やっぱり、エアドラムよりも本当に叩いた方が気持ちいいですね」


むらかみ・しん◎リンクトイン日本代表。大学在学中に仲間とITベンチャー「電脳隊」を創業。2000年、PIMとヤフーの合併を機に同社へ入社。一度退職した後、12年にヤフーの執行役員兼CMOに就任。17年11月より現職。

井関庸介 = 文 宇佐美雅浩 = 写真 秋葉原UDX = 撮影協力

この記事は 「Forbes JAPAN 時空を超える、自分を超える異次元のワークスタイル」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事