液晶保護フィルムにゴミが入ったときにtwitterで“死にたい”と打ち込むと気持ちがスッキリすることを発見。そこから、ささいないちいち死ぬほどでもないような出来事を1snt(シニタ)という単位にすることを思いついたといいます。「液晶保護フィルムを貼るときにゴミが入り込んだときの死にたさ」を1sntの目安として、ほかには、「ツイート後に誤字脱字を見つけたとき」などとしています。
この単位では、自分の感情を数値化することで他人と共有できるようになっていますが、脳波の計測技術も進んでいるので、これからは感情もより正確に数値化できる時代がくるように思えます。
単位マーケティングを活用している商品事例として、タイツを選ぶ際の密度の単位「デニール」を活かした商品が話題になりました。
「デニール」は、数値が高いほど肌の透け具合が減り、普通の黒タイツが60〜80デニール、真冬用でも120デニールくらいだそうですが、新しく発売さたタイツはなんとファッションブランドの「Bobon21」が販売している「1200D暖か着圧タイツ」で、なんと1200デニール。真冬用のタイツの10倍のデニールでとても暖かいが、見かけの濃さは40デニールほどで透けているように見えるという不思議なタイツです。
女性が持つ「デニール」という単位への認識を逆手にとることで話題となった「Bobon21」
その秘密は、タイツの「内部の色」にあります。表側は黒、でも裏返しにすると、肌色の生地があり、この仕込みのおかげで肌が透けているように見えるのです。「寒い日には分厚いタイツをはきたい。でも透け感のあるタイツがいい」というニーズに見事に応えた商品で、人気のためこのタイツは現在品切れ中のようです。
いくつかの事例を紹介しましたが、人は良くも悪くも単位を見て判断して動いています。つまり新しい単位を作ることで、人が動くきっかけを作ることができるというのが「単位マーケティング」だと考えます。
注目しているのは、テクノロジーの進歩によってこれまで見えなかった五感や感情を測ることができるようになりつつあることで、例えば、大好きなアイドルと握手したときの胸の高鳴りや、ジェットコースターに乗ったときの不安と興奮の単位を作ったら、もっと体験したい人が増えると思いませんか?
商品開発やマーケティング、広告宣伝に携わる方は「新しい視点」を求められることが多いと思います。その際、ひとつのメソッドとして、紹介した事例にあるような、人を動かすための「新しい単位」を考えてみてはいかがでしょうか。
筧 将英◎電通第2総合ソリューション局所属。普段は企業のマーケティング課題を解決することを生業としています。個人では、WEBメディア「東京ビールクラブ」を運営しています。