ドクター本荘の「垣根を超える力」




搭載モデル発売も射程距離に


この画期的な技術を開発したClearMotionの将来的な展望は、これに留まらない。次の3つを見据えて、さらに研究開発に取り組んでいる。

1. ロード・データ

すでに驚くほど揺れを低減できるClearMotionの技術だが、さらに進化させるべく、路面データの活用をもくろんでいる。ClearMotionのシステム搭載のクルマの走行とセンサーのデータを吸い上げるクラウドソーシングにより、20センチのメッシュで路面マップをつくる。これをソフトに反映できれば、システム制御をさらに進化させられる。

そして、この路面データで都市インフラ整備に貢献することも考えている。路面状況データの数学的モデリングにより、修復・工事のコストを最小化できる。例えば、これ以上悪化すると工事コストが大幅にアップする箇所を、その前に着手すれば費用は節約できる。あるいは工事の優先順位をつけやすくなるのだ。

2. タイヤ・トゥ・ヒューマン

クルマはまずタイヤから外部と接し、さまざまな要素を経て人へとつながる。窓からの振動なども含め、インパクト・チェーンとも言うべきこのプロセスをトータルに研究する。同時に、ポリマー研究や材料のテストなど技術開発に取り組む。これはブリヂストンとも共同研究している。

また、人が揺れをどう感じるか。例えば、揺れるクルマの中で文字を読むと眼球がそれを追うことで車酔いする。これを解き明かせば、車酔いにフォーカスした制御ができる。その他にもいくつかの目的に応じたモードを設けることで、ユーザーがベストな制御モードを選べるようになる。

3. フル・キャンセレーション

卓越したClearMotionの技術でも、まだ完全ではない。フル・キャンセレーション、つまり揺れを完全に制御し、乗車体験をさらにレベルアップするべく、上記の2つだけでない新しいテーマにチャレンジしている。

例えば、アクティブ・シーティング。オーディオ機器で有名なBOSEから、すでに米国で2万5千台のトラックに装備されている座席制御を提供する自動車用モーションコントロール部門を買収し、ClearMotionのシステムへの統合を考えている。乗車体験をさらにレベルアップできるだろう。

ClearMotionは、いまや200名のチームで攻めに打って出ており、自動車関係各社と商品化と開発の議論を続けている。この夏には日本企業ともう2社の連携を発表する予定だ。

すでにClearMotionの革新的技術を搭載した完成車の第1号モデル発売に向けて着々とことは進んでいるという。来年、ボストンで年3万台分の生産ラインを立ち上げ、翌年には生産キャパを大幅に増強する。

これらの研究開発や生産体制のため、さらに年内に前回を上回る大型の資金調達を計画しているという。シャキール・アバダニ氏とClearMotionの今後の挑戦に期待したい。

連載 : ドクター本荘の「垣根を超える力」
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文=本荘修二

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